北広島(町)(読み)きたひろしま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「北広島(町)」の意味・わかりやすい解説

北広島(町)
きたひろしま

広島県北西部、山県(やまがた)郡にある町。2005年(平成17)山県郡芸北町(げいほくちょう)、大朝町(おおあさちょう)、千代田町(ちよだちょう)、豊平町(とよひらちょう)が合併して成立。町域の北部から北西部にかけて、島根県との県境付近に阿佐(あさ)山、冠(かんむり)山、大佐(おおさ)山、その南に続く臥竜(がりゅう)山など1000メート級の山々が連なり、西中国山地国定公園に含まれる。この南方に高原地帯が広がり、南東部は丘陵地が卓越。町の東半は日本海に注ぐ江(ごう)の川の、西半は瀬戸内海に注ぐ太田(おおた)川の源流域にあたる。中国自動車道と浜田自動車道が千代田ジャンクションで連絡、ほかに国道186号、191号、261号、433号も通じ、山陰山陽の中間地における交通の要衝となっている。北部は冬季の積雪量が多く、スキー場が集中する日本最南端の地域として知られ、広島都市圏を背景に観光、レクリエーションエリアとして発展。林業と酪農、高冷地野菜の栽培が盛んな北部に対し、南部地域は米作が中心。さらに広島市に接し、交通の利便性が高い立地条件を生かして、県営千代田工業・流通団地ほかの工業団地に進出する企業も増えている。神楽(芸石神楽)や「はやし田」といった郷土芸能をよく伝えている。「はやし田」は「囃し田」で、囃子(はやし)をともなう共同の田植え行事。新庄(しんじょう)地区の「はやし田」は、国の選択無形民俗文化財で、同時に安芸高田(あきたかた)市高宮町原田(たかみやちょうはらだ)地区の「はやし田」と合わせて「安芸のはやし田」の名称で国指定重要無形民俗文化財。川東(かわひがし)地区の「はやし田」用具は国指定重要有形民俗文化財壬生(みぶ)地区の花田植(はなたうえ)も「はやし田」行事で国指定重要無形民俗文化財に指定されており、2011年にはユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。太鼓踊りの一種、本地(ほんじ)の花笠踊は国選択無形民俗文化財。なお吉川元春(きっかわもとはる)が隠居所とした館跡(国指定史跡)および庭園(国指定名勝)や旧万徳院(まんとくいん)庭園(国指定名勝)など、戦国時代に当地を拠点に芸北(げいほく)、石見地方に勢力を振るった吉川氏に関わる史跡も多く残る。臥竜山のふもとには、1957年(昭和32)樽床ダム(たるとこだむ)が竣工。ダム湖の聖(ひじり)湖畔には町立芸北民俗博物館があり、その傍らに水没した樽床集落から中門造り(曲がり屋)の民家が移築された。この建物は所蔵の民具とともに「樽床・八幡山村生活用具および民家(たるとこやわたさんそんせいかつようぐおよびみんか)」の名称で国の重要有形民俗文化財に指定。面積646.20平方キロメートル、人口1万7763(2020)。

[編集部]


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