十二タングステン酸(10-)塩(読み)ジュウニタングステンサンエン

化学辞典 第2版 の解説

十二タングステン酸(10-)塩
ジュウニタングステンサンエン
dodecatungstate(10-)

M10[H2W12O42]・nH2Oまたは5M2O・12WO3nH2Oで示されるイソポリ酸塩で,パラタングステン酸塩ともいう.IUPAC名はジヒドロキソテトラコンタオキシド十二タングステン酸(10-)塩.K塩,Na塩は,M2WO4(慣用名,オルト酸塩)よりやや溶解度が低いため,オルト酸塩の水溶液に,この塩の生成に適した酸性度になるまでHClなどの酸を加えれば,各金属塩が結晶として析出する.K塩は,K2WO4水溶液にWO3を加えて加熱すると得られ,NH4塩は,NH3水溶液にWO3を溶かし,濃縮すると得られる.(NH4)10[H2W12O42]・10H2O[CAS 12028-06-7]は,斜方晶系で,[H2W12O42]10- は正八面体型の3個のWO6が,図(a)および(b)のように稜共有でつながったもの各2個ずつが,交互に結合した図(c)の構造で,2個のHは中央の空洞に位置している.W-O1.70~2.32 Å(平均1.90 Å),O-O2.49~2.97 Å.Na塩(二十水和物,三斜晶系),Mg塩(三十八水和物,三斜晶系),K塩(十水和物,斜方晶系)なども同様の構造をもつ.アルカリ金属塩は水に可溶,水溶液はほとんど中性で,オルト塩より酸性,メタ塩(メタタングステン酸塩)よりはアルカリ性である.結晶は空気中で安定である.加熱すると脱水が起こる.[CAS 51682-69-0:十二タングステン酸(10-)イオン]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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