又・亦・復(読み)また

精選版 日本国語大辞典 「又・亦・復」の意味・読み・例文・類語

また【又・亦・復】

[1] 〘副〙
① 同じ行為、状態がもう一度出現するさまを表わす語。再び。もう一度。
書紀(720)大化五年三月・歌謡「本毎(もとごと)に 花は咲けども 何とかも 愛(うつく)し妹が 磨陁(マタ)咲き出来ぬ」
② 一つの状態が他の状態と類似、あるいは一致すると認める気持を表わす語。同様に。同じく。
※土左(935頃)承平五年一月一五日「たてばたつゐればまたゐるふく風と波とは思ふどちにやあるらん」
③ 一つの状態の他に、もう一つ別の、類似、あるいは対立する状態のあり得ることを認める気持を表わす語。ほかに。さらに。他方。
源氏(1001‐14頃)帚木「思ひめぐらせば、なほ、家路と思はん方は、又なかりけり」
④ 「…また…」の形で同じ名詞を受けて、どこまで行っても、いつまでたってもその物がずっと続くさまを表わす。
※和漢朗詠(1018頃)下「山また山 何れの工か青巖の形を削り成せる〈大江澄明〉」
⑤ 疑問文に用いて、事態をいぶかしがる気持を強調する語。一体全体。
三国伝記(1407‐46頃か)一一「更(マタ)滅罪方便有りや否や」
⑥ 一つの評価・判断を強調して示す語。まったく。特に。
読本・椿説弓張月(1807‐11)残「理外の奇縁なれば、その気を感じて子を産こと亦(マタ)なしと誣(しひ)がたし」
[2] 〘接続〙
① 並列的な、または選択的な関係にある事柄を列挙することを示す。ならびに。あるいは。または。
万葉(8C後)八・一五三八「萩の花尾花葛花瞿麦(なでしこ)が花女郎花(をみなへし)(また)藤袴朝貌が花」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「御送り迎への人の衣の裾堪へがたくまさなきこともあり。又、ある時は、えさらぬ馬道の戸をさしこめ」
② 前の事柄に後の事柄が添加されることを示す。その上。さらに。そればかりでなく。
※枕(10C終)一「霜のいとしろきも、またさらでもいと寒きに」
[補注]接続詞「また」の成立は、漢文訓読において、「且」「又」「亦」「復」を「マタ」と訓読したことによると考えられている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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