精選版 日本国語大辞典 「受・請」の意味・読み・例文・類語
う・ける【受・請】
[1] 〘他カ下一〙 う・く 〘他カ下二〙
[一] 他から加えられる作用を身に引き取る。また、他の言うことやすることに応じて行なう。
① 落ちてくるものや向かってくるものなどを支え止める。受け止める。
※万葉(8C後)一〇・一九六六「風に散る花橘を袖に受(うけ)て君がみ跡と偲ひつるかも」
② 渡される物を引き取る。もらう。
※書紀(720)神代下(寛文版訓)「別(こと)に新(にひ)しき鈎(ち)を作て兄(このかみ)に与ふ。兄受(ウケ)肯(ゑ)ずして其(そ)の故(もと)の鈎(ち)を責(はた)る」
※宇治拾遺(1221頃)三「酒を一かはらけうけて、持ちながら」
③ よいと認めて受け入れる。承知する。賛成する。
※竹取(9C末‐10C初)「よき事なりとうけつ」
※古今(905‐914)恋一・五〇一「恋せじとみたらし河にせしみそぎ神はうけずぞなりにけらしも〈よみ人しらず〉」
④ 問いかけ、命令、試験、電話などに応じる。
※書紀(720)神武即位前戊午年一一月(寛文版訓)「兄磯城、命(おほむこと)を承(ウケ)ず」
※源氏(1001‐14頃)乙女「史記のかたきまきまき、寮試うけんに」
⑤ 信用する。信頼して大事にする。
※源氏(1001‐14頃)御法「あやしきまですずろなる人にもうけられ」
⑥ 神仏を、つつしんで迎える。
⑦ あとを継ぐ。継承する。
※風姿花伝(1400‐02頃)五「その風をうけて、道のため、家のため」
⑩ (性質、力、環境などを)天から授かる。
[二] 他から身に作用を加えられる。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)四「忍び難きを受(うケ)、命終しては定めて无間地獄に生れむ」
※今昔(1120頃か)三一「身に重き病を受けて」
② 光、風などに身をさらす。
③ ある方角に面する。
※人情本・英対暖語(1838)二「此庭は東南をうけて居るから」
④ がまんして相手の話を聞く。特に、のろけ話などの聞き手になる。
※滑稽本・客者評判記(1811)下「わるい声色をうけてゐるも立切ねへやつよ」
[三] 代金を払って引き取る。
① 質に入れた物をうけ出す。
※浮世草子・世間胸算用(1692)一「置けるか、そののち請(ウク)る事成がたく」
② 遊女などを身請けする。
※日葡辞書(1603‐04)「ミヲ vquru(ウクル)〈訳〉身請けされる」
③ 問屋などから品物を仕入れる。仕込む。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)六「浮世山枡を受(ウケ)て小袋に入行」
[四] 賭け事に勝ち、金を得る。
※黄表紙・莫切自根金生木(1785)中「このやうないめへましいよとうばくちはねへ。一番もうけねへ」
[2] 〘自カ下一〙
① 芝居などで見物人に喜ばれて喝采(かっさい)される。また、よい評判を得る。人気を得る。
※滑稽本・七偏人(1857‐63)三「ヤンヤとうけるきでゐるんだアな」
② 芝居などを見て、観客が喜ぶ。喝采する。
※滑稽本・客者評判記(1810)上「見功者ばかりが受てぢゃったが」
[語誌]古来助詞ヲを受ける他動詞であるが、(二)のように芝居などで客から好評を得る、評判がよいの意の場合、自動詞に転ずる用法が江戸後期に生まれた。もっとも、江戸前期の「大坂檀林桜千句‐第五」の「今日も請たる所作をくり返し〈本秋〉」を、この例に解釈する説もある。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報