明刀銭(読み)めいとうせん(英語表記)míng dāo qián

精選版 日本国語大辞典 「明刀銭」の意味・読み・例文・類語

めい‐とうせん ‥タウセン【明刀銭】

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改訂新版 世界大百科事典 「明刀銭」の意味・わかりやすい解説

明刀銭 (めいとうせん)
míng dāo qián

中国古代の刀形貨幣(刀貨)の一種で,戦国時代の燕国で通用した銅貨。春秋時代に山東半島を支配した斉国で刀子(とうす)の形を青銅鋳造した刀銭おこり北京を中心とする燕国に伝わったものとされている。燕国の刀銭は刀身に〈明〉に似た文字を鋳出していることから,俗に明刀銭とよばれている。明字の解釈については各種あるが,燕の古字である匽の省略文字にあてる説が有力である。明刀銭は大きく3型式に分類されている。1型式は明字をかき裏面に〈斉化〉などの地名をいれ,刀背の身と柄(つか)との境が弧形に曲がるもの。2型式は明字をとかき,裏面に鋳造の番号らしい左,右などの文字をいれ,刀背が弧形に曲がるもの。3型式は明字をとかき,裏面に左,右などの文字をいれ,刀背の身と柄との境が折れ曲がるもの。戦国時代後期につくられた燕下都から出土した明刀銭の鋳型は3型式であり,河北・遼寧地方で発見されるものは2・3型式であるといわれる。1型式の発見例は少なく,斉国でつくられたらしい。

 明刀銭は,布銭円銭など他の戦国時代貨幣とともに数千枚にまとめ,都市や集落から離れた人目につかないところに隠匿した状況で発見される場合が多い。朝鮮半島北部でも布銭とともに多量にまとまって発見され,沖縄県那覇市の城岳(ぐすくだけ)貝塚からも発見されている。明刀銭の分布は燕国の経済流通圏を明瞭に示していると同時に,文字資料を欠く中国東北部や朝鮮半島における古代遺跡の年代を決める有力な手がかりになっている。
刀貨
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「明刀銭」の意味・わかりやすい解説

明刀銭
めいとうせん
Ming-dao-qian

貨幣の一種。中国の戦国時代におもに燕で流通した。長さ 15cmほどの刀子形の銅銭で,「明」の文字が陽鋳してある。朝鮮では多く大同江以北の山間部から鉄器や青銅器とともに出土し,前3世紀頃における大陸からの金属文明の流入を示す資料とされる。

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世界大百科事典(旧版)内の明刀銭の言及

【貨幣】より

…斉刀は明刀に比べて刀身部が広く斉の地名を冠するものが多い。戦国後半期になると,明刀の柄環部が分離する形で明刀銭(中央に正方形の穴をもついわゆる方孔円銭)が造られ,斉刀の流通圏でも3種の方孔円銭(化(あいか)銭)が造られた。なお,方孔円銭と起源を異にする円孔円銭が布銭の流通圏でも造られ併用された。…

【銅銭】より

…戦国時代には貨幣経済が盛んとなり,とくに都市において商取引が貨幣で決済されるようになると,旧来の布銭や刀貨は角ばって扱いがたく使用に不便であったためか,しだいに円形化したり単純化する傾向が生まれた。この趨勢の中で現在の河北省北部を中心とした領域をもった燕国では旧来の刀貨の柄環部を独立させて,その表面に刃部に刻まれていた明字と柄部の紋を中央の方孔のそれぞれ右左に刻む明字円銭(明刀銭)が発行された。この明刀銭の形式はまもなく南隣の斉国に受容され,化銭(あいかせん)が作られる。…

※「明刀銭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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