司馬遷(武田泰淳の評論)(読み)しばせん

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

司馬遷(武田泰淳の評論)
しばせん

武田泰淳(たいじゅん)の評論。1943年(昭和18)日本評論社刊。第1編「司馬遷伝」と第2編「『史記』の世界」よりなる。第1編では腐刑宮刑)という辱めに耐えて記録への執念に生きた司馬遷にとっての記録することの意味を世界の批判者ととらえている。第2編では、「本紀」「世家」「列伝」入り乱れて互いに否定しあう世界として『史記』をとらえ、個的な持続しないものによって空間的に持続するものが支えられているという「絶対持続」という独特な歴史観が示される。泰淳の滅亡論の基盤を示す、評論文学の傑作

[助川徳是]

『『司馬遷――史記の世界』(講談社文庫)』『兵藤正之助著『武田泰淳論』(1978・冬樹社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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