合・会・相(読み)あい

精選版 日本国語大辞典 「合・会・相」の意味・読み・例文・類語

あい あひ【合・会・相】

[1] 〘名〙 (動詞「あう(合)」の連用形の名詞化) あうこと。また、動作を共にしたり、相互に関係をもったりする意を表わす。
[一] あうこと。会合対面
万葉(8C後)四・七四一「夢(いめ)の相(あひ)は苦しかりけり覚(おどろ)きてかきさぐれども手にも触れねば」
[二] 人と行動を共にしたり、相手をしたりすること。
① 二人で向かい合って、互いに声をかけながら槌(つち)で物を打つこと。あいづち。
※十巻本和名抄(934頃)五「撃 纂文云斉人以大槌。〈漢語抄云阿比〉」
② 共謀すること。また、その仲間。同類。ぐる。
浄瑠璃・吉野都女楠(1710頃か)四「ムム、扨(さて)はあいじゃの」
③ 相手。また、相手をすること。
歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)四「ハテ、あいには愚僧が行かいでたまる物か」
あいこ。あいうち。
[2] 〘接頭〙
[一] 動詞の上に付く。
① ともに関係することを表わす。
(イ) ともに。ともどもに。いっしょに。
※古事記(712)中・歌謡「道の後(しり)古波陀嬢子(こはだをとめ)を神の如(ごと)聞えしかども阿比(アヒ)枕まく」
※米沢本沙石集(1283)四「今すこし若くおはす時(とき)人をも相語らひ給へ」
(ロ) 向かい合った関係にあるさま。互いに。
※古事記(712)下・歌謡「肝(きも)向かふ 心をだにか 阿比(アヒ)思はずあらむ」
語調を整えたり、語勢を添えたりする。改まった言い方として、近代では手紙などに用いる。
源氏(1001‐14頃)手習「小野に侍りつる尼どもあひ訪(と)ひ侍らんとてまかり寄りたりしに」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉三「脚気症に相(アイ)(かか)り、起臥共に、頗(すこぶる)困難を覚候故」
[二] 名詞の上に付く。
① 同じ関係にある間柄。「相弟子」「相番」など。
② 互いに向かい合った関係。「相対」「相たがい」「相四つ」など。
[3] 〘語素〙 (名詞に付いて接尾語的に) 前後の事情や関連における、もののありかた。「意味合い」「色合い」「頃合い」など。
[補注]接頭語として動詞に接する場合、次のように間に助詞を伴うことがある。「正月たつ春のはじめにかくしつつ安比(アヒ)し笑みてば時じけめやも」〔万葉‐四一三七〕、「大和なる耳無山の山彦は呼べどもさらにあひも答へず」〔多武峰少将物語〕。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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