吉続記(読み)きちぞくき

改訂新版 世界大百科事典 「吉続記」の意味・わかりやすい解説

吉続記 (きちぞくき)

権大納言吉田経長日記書名は,経長の先祖藤原経房が吉田と号し,その日記を《吉記》と称したことから,これをつぐ意味で《吉続御記》と名づけ,これを略して《吉続記》という。1267年(文永4)より1302年(乾元1)に及ぶが,中間22年分を欠く。経長は亀山・後宇多両天皇の信任が厚く,いわゆる〈両統迭立(てつりつ)〉の際には,亀山天皇系の大覚寺統立場に立って活躍したことが日記よりうかがわれる。《増補史料大成所収
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉続記」の意味・わかりやすい解説

吉続記
きつぞくき

『経長卿記(つねながきょうき)』ともいう。吉田(藤原)経長(1239―1309)の日記。書名は経長の高祖父吉田経房(つねふさ)の日記『吉記(きっき)』にちなむ。原本は失われ、写本によって1267年(文永4)から1302年(乾元1)までの断続的な記事が伝えられる。経長は亀山(かめやま)、後宇多(ごうだ)両上皇の信任厚く、朝政の枢機に列し、また朝幕間の諸般の交渉にもあたっており、『吉続記』は鎌倉後期政治史の基本史料である。ことに両統迭立(てつりつ)をめぐる問題や、蒙古(もうこ)襲来に対する祈祷(きとう)、防御策などについて詳細な記事がある。『史料大成』所収。

[田中博美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吉続記」の意味・わかりやすい解説

吉続記
きつぞくき

『経長卿記』ともいう。鎌倉時代後期,弁官蔵人の職にあった吉田経長 (1239~1309) の日記。書名は経長の高祖父にあたる吉田経房の日記『吉記』にちなんだものである。当時の朝幕関係や元寇対策などの記事を含む重要史料。正嘉1 (1257) ~乾元1 (1302) 年のうち,断続する 18年分が現存している。『史料大成』所収。

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世界大百科事典(旧版)内の吉続記の言及

【勧修寺家】より

…なお江戸時代には同家に,甘露寺,葉室,万里小路(までのこうじ),清閑寺,中御門(なかみかど),坊城,芝山,池尻,梅小路,岡崎,穂波,堤の諸家を加えた13家を総称して勧修寺家ともいい,当時の名家の過半を占めた。また勧修寺一門の廷臣は,為房の《大記》をはじめ,経房の《吉記》,経俊の《吉黄記》,経長の《吉続記》など,重要な日記を多く残しており,その記述は実務官僚としての一門の性格をよく反映している。現在京都大学文学部に蔵する〈勧修寺家文書記録〉には,為房の自筆日記をはじめ,近世に至る貴重な文書や記録を収めているが,経房,資経,経俊,定資,経顕の各遺領処分状には,合わせて20ヵ所前後の所領が載せられている。…

※「吉続記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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