向島(読み)むこうじま

精選版 日本国語大辞典 「向島」の意味・読み・例文・類語

むこうじま むかふじま【向島】

[一] (隅田川向こう岸に島のように見えたところからの称) 東京都墨田区、隅田川の東岸にある地名。江戸時代に天領となる。郊外の景趣に富み、墨堤の桜・百花園・三囲(みめぐり)社・牛島神社などが知られた。
[二] 旧東京市三五区の一つ。昭和七年(一九三二)成立。同二二年本所区と合併して墨田区の北部となる。商工業地域を形成。

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デジタル大辞泉 「向島」の意味・読み・例文・類語

むこうじま〔むかふじま〕【向島】

東京都墨田区の地名。もと東京市の区名。隅田川東岸に位置し、百花園白鬚しらひげ神社三囲みめぐり神社長命寺などがある。

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日本歴史地名大系 「向島」の解説

向島
むこうじま

[現在地名]防府市大字向島

新田しんでん村の南にある島で、島のほぼ中央ににしき(三五四・一メートル)がそびえる。新田村などの開作が行われる以前は、三田尻の鞠生松原みたじりのまりふのまつばらに対する島として勝景の地であったと思われる。萩藩領で三田尻宰判に属する。

康応元年(一三八九)三月、足利義満の厳島詣に随行した今川了俊は、その「鹿苑院殿厳島詣記」に「むかへ島といふうらに御舟を懸けたり」と記し、同じ時の元綱の「鹿苑院西国下向記」には「高洲と云所ニ御所を新造す、てうはう(眺望)いはん方なし、南ハまんまんたる海上ニむかふの島とて中間一里ばかりなる小島あり」と記している。

向島
むこうじま

現墨田区の北半部をさす広域地名。西は大川(荒川、現隅田川)、東は古綾瀬ふるあやせ川と中川(現旧中川)、北は新綾瀬川に限られる。南半部の本所が江戸時代に開発された新開地であるのに対して、向島は古代には武蔵国と下総国の国府を結ぶ官道が通過する低湿地帯で、隅田川には渡船が置かれた。中世には隅田すだ宿が形成された。江戸時代には江戸の近郊農村としておもに蔬菜類を生産し、江戸市中に供給した。木母もくぼ寺の辺りに将軍の食用に供する前栽を生産する御前栽畑が設けられた。

向島
むこうじま

ともえ川の河口部左岸の砂洲地帯をいう。対岸の清水町からみた形状から向島と称されたが、北はつじ村・江尻えじり宿に接しており、辻村では辻村地先、江尻宿では江尻島崎しまざきといった。巴川と清水湾流による土砂堆積で形成された砂洲で、近世を通じて北から南へ伸長し、合せて東西も幅を広げた。「久能山并御廻米其外駿府御城并御番衆方諸積荷物賄場所」(清水市文書)とみえ、清水町の荷物賄場などに利用されていた。

向島
むくしま

[現在地名]肥前町大字向島

納所のうさ半島の北端から西方へ約二キロの玄界灘に浮かぶ孤島で、周囲約二・四キロ、面積〇・三平方キロ。全体が丘陵地で、北部は切り立った絶壁の海岸。わずかに南側に人が居住できる平地がある。住民は漁業を生業とする。旱魃の被害を受けることが多く、風浪の激しい時は航行が途絶し、飲料水は天水に頼る場合が多い。島の南側海上にカシメ礁・烏帽子瀬えぼしせがあり、魚類の巣となっている。

文暦二年(一二三五)九月二〇日の尼いわひろ譲状案(有浦家文書)に「むくしま」とある。

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改訂新版 世界大百科事典 「向島」の意味・わかりやすい解説

向島 (むこうじま)

東京都墨田区北西部の地名。向島1~5丁目,東向島1~6丁目からなる。かつては旧向島区全域を指したが,同区は1947年本所区と合併,墨田区の一部となった。隅田川東岸にあり,浅草側から隅田川を隔てて島のように見えるために地名が起こったといわれる。江戸中期までは将軍家の御鷹場で,水田も広がっていた。木母(もくぼ)寺,牛島(牛御前(うしのごぜん))神社,三囲(みめぐり)神社,弘福寺,長命寺,白鬚神社があり,享保年間(1716-36)に将軍吉宗が堤の上に桜を植えさせてからは花の名所となり,料理茶屋も建ち並んだ。庶民の行楽地,文人墨客の遊所,また大名や商人たちの別荘地でもあった。1804年(文化1)には寺島村に佐原菊塢(きくう)の花園(のちの百花園)が開かれた。
執筆者: 明治中期より鐘ヶ淵紡績会社などの工場が進出,1899年には東武伊勢崎線が開通し,以後急速に都市化が進んだ。関東大震災,第2次大戦の空襲によって大きな被害を受けたが,いずれも工業を中核に復興を遂げた。とくに高度経済成長期以後は,過密と公害が大きな社会問題となり,1979年以来,墨田区は全国に先がけて都市の不燃化対策を強力に推進し,東京都の防災拠点の第1号として,北部の白鬚東地区に防火障壁を兼ねた巨大な集合住宅群を建設した。玉ノ井付近はかつて私娼街として知られ,永井荷風の《濹東綺譚》の舞台にもなった。隅田堤(葛西(かさい)堤,墨堤(ぼくてい))は桜の名所として行楽客でにぎわう。
執筆者:

向島 (むかいしま)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「向島」の意味・わかりやすい解説

向島
むかいしま

広島県南東部,尾道水道 (最狭部約 200m) を隔てて尾道市街地と向かい合う島。南側に高く,高見山 (283m) が最高点で,テレビ中継所が置かれている。北側に旧塩田 (1955廃止) や紡績工場,造船所などがある。水道の東側に 1968年完成の尾道大橋がある。 1970年島の東半部 (旧向東町) が,2005年には西半分 (旧向島町) が尾道市に編入された。南部の立花は気候温暖で花卉の栽培が盛んな長寿村として知られる。 1983年 12月因島大橋が完成。西瀬戸自動車道で本州,因島と結ばれる。面積 22.37km2。人口2万 7259 (1996) 。

向島
むかいしま

広島県南東部,尾道市南部の旧町域。向島の西半分と岩子島 (いわしじま) から成る。 1950年向島西村を改称して町制。 1954年岩子島村,1955年立花村を編入。 2005年尾道市に編入。かつて漁業と塩田の町であったが,現在は大小の造船所が立地し,ミカン,花卉の栽培も行なわれる。向島と橋で結ばれる岩子島は,ミカンが栽培され,海水浴でにぎわう。高見山山頂は眺望に優れ,付近は瀬戸内海国立公園に属する。

向島
むこうしま

山口県南部,三田尻湾口西部,周防灘に浮ぶ島。防府市に属する。最高所は錦山 (354m) 。南部は三郡変成岩で,北部は花崗岩から成る。本土との間の狭い水道に錦橋がかかり,郷ヶ崎などの漁業集落がある。一帯は,タヌキの生息地として天然記念物に指定されている。面積 7.95km2。人口 2052 (1996) 。

向島
むこうじま

東京都墨田区西部,隅田川東岸の地区。旧区名。江戸時代は郊外で,東向島にある百花園 (史跡,名勝) は当時の文人墨客の訪れた名所。地名の由来は,浅草から見て,隅田川の向う側に島のように見えた土地であることによる。現在は中小企業が密集する。隅田川沿いに首都高速6号向島線が通り,南部に隅田公園がある。

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デジタル大辞泉プラス 「向島」の解説

向島〔広島県〕

広島県尾道市、幅約300メートルの尾道水道を挟み、尾道市街に向かい合う島。「むかいしま」と読む。面積約22.23平方キロメートル。しまなみ海道により本土と結ばれている。西側にある岩子(いわし)島との間は向島大橋で結ばれる。

向島

佐賀県唐津市肥前町、星賀港から北へ約5キロメートルに位置する玄海諸島の島。「むくしま」と読む。面積約0.3平方キロメートル。島南部のクラマ岳には灯台が設置され、定期船の発着所付近には海水浴が楽しめるビーチがある。

向島〔山口県〕

山口県防府市南部に位置する架橋島。「むこうしま」と読む。同市の南海岸と、ごく狭い水道を挟んで向かい合う。かつては製塩工場が置かれた。ホンドタヌキの生息地。

向島〔香川県〕

香川県丸亀市、塩飽(しわく)諸島の本島笠島地区北方に位置する花崗岩の無人島。「むかいじま」と読む。

向島〔長崎県〕

長崎県諫早市南部、橘湾北部に位置する無人島。「むこうじま」と読む。

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