吹・噴・嘯(読み)ふく

精選版 日本国語大辞典 「吹・噴・嘯」の意味・読み・例文・類語

ふ・く【吹・噴・嘯】

[1] 〘自カ五(四)〙
気体が動く。風がおこる。風が出る。
古事記(712)中・歌謡「狭井河よ 雲立ち渡り 畝火山 木の葉さやぎぬ 風布加(フカ)むとす」
② 息をする。うそぶく。〔観智院本名義抄(1241)〕
③ 鳴く。
※石山寺本法華経玄賛平安中期点(950頃)六「は熊虎の声ぞ。玉篇には咆(フ)くぞ。咆は鳴なり」
④ 水や蒸気などが勢いよく出る。噴出する。また、汗がふきだす。
※青電車(1950)〈永井龍男〉C「矢庭に胸を突かれ、疲れた総身に汗の噴く思ひをしたが」
⑤ 水や煮物が沸騰して湯や汁が鍋・釜からこぼれる。
※俳諧・鷹筑波(1638)一「ときのこゑほどふく風呂の中 しかけぬる茶の湯もにゆる精進食〈賀和〉」
草木の芽が出る。
ヰタ・セクスアリス(1909)〈森鴎外〉「臭橘(からたち)薄緑の芽の吹いてゐるのが見える」
吹出物ができる。
⑧ かび、粉、塩などが表面に現われ出る。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「青い色の丸い物で白う粉のふいた物ぢゃ」
⑨ 相場が騰貴する。〔取引所用語字彙(1917)〕
[2] 〘他カ五(四)〙
① 口をすぼめて呼気を出す。また、細めにあいた口から息とともに吐き出す。
日葡辞書(1603‐04)「ヒヲ fuqu(フク)
② 内部から勢いよく出す。わくように出す。
※猿投本文選正安四年点(1302)「を吐いて風を生して野を欲(す)う、山を(フク)
③ すぼめた口から出す息で音をたてる。笛などの管楽器を鳴らす。
書紀(720)継体二四年是歳・歌謡「枚方(ひらかた)ゆ 笛輔枳(フキ)上る 近江のや 毛野(けな)若子(わくご)い 笛符枳(フキ)上る」
源氏(1001‐14頃)胡蝶「物の師ども、ことにすぐれたるかぎり、双調(さうでう)ふきて」
④ 大げさなことをいう。誇張していう。大言をはく。でまかせをいう。自慢する。
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「コチワ ソラウソ fuite(フイテ) イテ」
⑤ 買い手に物の値段を高くいう。ふっかける。
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一「日本人だと見りゃア百文の物を壱両ぐらいにゃアふくだらうから」
⑥ 風があたって物を動かす。
万葉(8C後)一九・四二九一「わが屋戸のいささ群竹布久(フク)風の音のかそけきこの夕かも」
⑦ 金属をとりだすため、強い風を送り、火力をあげて、鉱石を溶かす。金属を精錬する。
※万葉(8C後)一四・三五六〇「真金(まかね)布久(フク)丹生(にふ)の真朱(まそほ)の色に出て言はなくのみそ吾(あ)が恋ふらくは」
⑧ 金属を鋳(い)貨幣や器具をつくる。鋳造する。
※日葡辞書(1603‐04)「カネヲ fuqu(フク)
⑨ 草木が芽を出す。
※俳諧・春鴻句集(1803頃)春「此ほどや舞台くすせは木の芽吹」
⑩ かび、粉、塩などを、表面に現わし出す。「柿が粉をふく」
※坑夫(1908)〈夏目漱石〉「剥げた中から緑青を吹いた様な味(み)が出てゐる」
⑪ 垢(あか)をかきとる。
※咄本・醒睡笑(1628)八「太閤御所、風呂に御入ありつるを、〈略〉御垢にまゐらんとて吹かれけるやう」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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