日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
告白録(アウグスティヌスの著書)
こくはくろく
Confessionum libri tridecim
ローマ時代末期の教父・思想家アウグスティヌスの著書。本書はアウグスティヌスの自叙伝的な部分を多く含み、『神の国』とともにもっとも著名な代表作である。13巻からなる本書は、第1巻1~5に全体の序説が述べられる。開巻冒頭の「われらの心は汝(なんじ)の中に憩いをみいだすまでは安らぎを得ない」は、著者の基本的な姿勢を示す。第1巻6から、幼年、少年、青年の、それぞれの時期の精神史的な遍歴と展開をつづり、第8巻で、壮年期の初めに経験した回心の劇的なできごとを述べる。第9巻は母モニカの追憶を語って美しいキリスト教文学の真髄を披瀝(ひれき)する。第10巻は執筆当時の自己の生を詳細に分析し、人間の本性的に神を問い求めざるをえない根本的構造を明らかにする。第11巻から第13巻では、時間論を含めて『創世記』冒頭の注解をなす。全巻は修辞学者アウグスティヌスの思索とことばの緊密な関係を示す文体で貫かれている。
[中沢宣夫]