哀・憐(読み)あわれぶ

精選版 日本国語大辞典 「哀・憐」の意味・読み・例文・類語

あわれ‐・ぶ あはれ‥【哀・憐】

[1] 〘他バ四〙
古今(905‐914)仮名序「花をめで、とりをうらやみ、かすみをあはれび、つゆをかなしぶ心、ことばおほく」
※南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)一「汝、児子を憐愛(アハレフ)や」
源氏(1001‐14頃)明石「もし年頃老法師の祈り申し侍る神仏のあはれびおはしまして」
[2] 〘他バ上二〙 (一)に同じ。
※大鏡(12C前)六「おのれまでも、恵みあはれびられ奉りて侍る身と」
[語誌]「あわれと思う」意で、「あわれむ」の古形とされる。「あわれぶ」「あわれむ」は動作の直接的表現であるのに対し平安仮名文学で多く用いられる「あわれがる」は、物語用語として、登場人物が「あわれに思い、その気持言動にあらわす」意で、間接的な表現になる。また、そのようにふるまう場合にも用いられる。

あわれ‐・む あはれ‥【哀・憐】

〘他マ五(四)〙
① いつくしむ。愛する。感心する。賞美する。あわれぶ。
※元永本古今(905‐914)仮名序「花をめで、鳥をうらやみ、霞をあはれみ」
② ふびんに思う。同情する。また、慈悲の心をかける。恵む。あわれぶ。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)九「天恩矜(アハレミ)(かなし)むで、降(くだ)すに良医を以てす」
※天草本伊曾保(1593)イソポ アテナスの人々に述べたる譬へ「テン コレヲ auaremaxerarete(アワレマセラレテ)
[語誌]→「あわれぶ(哀・憐)」の語誌

あわれみ あはれみ【哀・憐】

〘名〙 (動詞「あわれむ(哀)」の連用形名詞化)
① 感心すること。いとしく思うこと。また、なつかしく思うこと。あわれび。
夫木(1310頃)三「あはれみの後の春まで残りけりつばめの足につけし糸すぢ〈藤原為相〉」
② ふびんに思うこと。慈悲。同情。あわれび。
方丈記(1212)「あはれみを以て国を治め給ふ」
※虎寛本狂言・薩摩守(室町末‐近世初)「出家ほど心安いものは御ざらぬ。あなたこなたのあはれみをうけて」

あわれび あはれび【哀・憐】

〘名〙 (動詞「あわれぶ(哀)」の連用形の名詞化) =あわれみ(哀)
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「たまたま聞きつくるけだもの、ただこのあたりにあつまりて、あはれびの心をなして」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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