唐竿(読み)からさお

改訂新版 世界大百科事典 「唐竿」の意味・わかりやすい解説

唐竿(棹) (からさお)

連枷れんが),くるりともいう。大唐稲(インド型の稲)や麦,あるいは大豆などの脱穀に用いる。日本で文献に現れてくるのは元禄以降であるが,中国から伝えられたもので,名称の〈唐〉はそのことに由来している。回転脱穀機の出現以降少なくなったが,一部の地域では戦後しばらくまで使われていた。構造は,長さ1.5~2mの柄の先端に,長さ40~70cm,幅10cm程度の厚い板または鉄製のわくを,回転できるように柄と平行に取り付けたものである。これが回転するように反動をつけて柄を上下に振る。十分に乾燥した作物地面に敷き,その穂をこの回転部分でたたくと,穀粒はその衝撃で付け根から離れる。また大豆はさやが裂けて粒が出てくる。このような脱穀方法は,千歯扱きなどの“扱く”方法と区別して〈打穀〉と呼ばれることがあり,脱粒しにくい日本型の稲には適さない。打穀にはからさお以外に,作物の束を手でもって石臼格子戸のような打穀台に打ちつける方法も広く用いられた。
農具
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「唐竿」の意味・わかりやすい解説

唐竿
からざお

脱穀用農具の一種で、くるり棒、めぐり棒、ぶりこなどともよばれ、連枷とも書く。麦・稲の脱粒、穂切り、芒(のぎ)落しや豆類・ソバなどの脱穀にも使う。構造は打木(うちぎ)、軸木、柄(え)の3部からなり、柄を持って上下に振り、打木を回転させて、莚(むしろ)や地面の上に広げた麦・稲などをたたいて使う。大きさは、普通、打木の長さ60~70センチメートル、柄の長さ150~160センチメートル程度である。柄は竹(マダケ)が一般的で、この先端を折り返して軸木を挟む。打木には丸太を使うもの、割り竹を編んで束ねたもの、3~4本の細木を縄で編み束ねたものがあり、これを軸木の枘穴(ほぞあな)に接合する。軸木だけは棒屋(ぼうや)(鍬(くわ)などの柄をつくる職人)につくらせることが多いが、地方によっては軸木と打木を1本の木からつなげて削りつくったものがある。また軸木がなく、柄(竹・木)と打木を縄で連結したもの、柄が打木より短いものもある。唐竿という言い方は、打木を軸木につけることによって回転させて使うのが新式で、効率がよいことからの命名である。しかし、唐竿での麦打ちは夏の炎天下でのつらい仕事で、他家共同で行ったり、麦打ち唄(うた)で調子をとりながら行われた。

[小川直之]

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百科事典マイペディア 「唐竿」の意味・わかりやすい解説

唐竿【からさお】

連枷(れんが),くるりとも。手用の脱穀具。ふつう1.5mほどの木または竹の柄の先端部に小さい横木を付け,これを中心に回転するように打ち木を装着する。打ち木は90cm内外,木製か割竹を編んだもの,または鉄製のわく。柄を振り打ち木を回転させつつ穀類を脱穀する。日本で文献に現れるのは元禄以降,中国から伝えられたもので,名称の〈唐〉はそのことに由来している。一部地域では第2次大戦後しばらくまで使われていたが,脱穀機の発達とともに姿を消した。→農具

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「唐竿」の意味・わかりやすい解説

唐竿
からさお

麦,豆などの脱穀用農具。連架 (れんか) ,クルリ棒,舞杵 (まいきね) などとも呼ばれた。竿の先に回転部分を取付け,拍子をとって回しながら,むしろに広げた穀物を打つもので,回転部分には木の棒や割竹を編んだものを用いる。

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