唐紙(とうし)(読み)とうし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「唐紙(とうし)」の意味・わかりやすい解説

唐紙(とうし)
とうし

中国南部で生産される種々の紙の日本での総称。奈良時代までにアサ(麻)またはコウゾ(楮)を原料とした溜(た)め漉(ず)き法による製品が、主として写経用として輸入されていたことは、正倉院宝物にみられる。平安時代には染め紙が貴族社会でもてはやされたようすも、当時の王朝文学作品などからうかがえる。中世になると、品質や生産量においては和紙が優位をみせるようになるが、それでも唐紙は、その後、原料に竹の繊維を応用する方法が完成するなど、墨書きになお特有の雅趣があったため珍重された。江戸時代にも多く輸入され、上等品は毛辺(もうへん)、下等品は連史(れんし)とよばれた。一方和唐紙とよばれる模造品も、江戸や水戸、薩摩(さつま)(鹿児島県)などでつくられた。

 同じ唐紙も「からかみ」と読む場合、後世では襖(ふすま)紙あるいは襖自身のことをさすが、これは、室町時代から板戸にかわって紙の障子が流行し、襖に輸入紙を張ったことからの名残(なごり)である。

[町田誠之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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