唸・呻(読み)うなる

精選版 日本国語大辞典 「唸・呻」の意味・読み・例文・類語

う‐な・る【唸・呻】

〘自ラ五(四)〙
① 力を入れたり、苦しんだり、感心したりして、長く引いた低い声を出す。うんうんいう。うめく。
※雑俳・柳多留‐三五(1806)「かけとりが来ると作兵衛うなり出し」
② 力を入れ、長く声を引いて歌う。謡曲浄瑠璃小唄浪曲などにいい、特にへたな歌い方にいうことがある。
※四河入海(17C前)八「さて我が詩を吟じてうなるに伴(ともな)へと云ぞ」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「江戸節を喊(ウナ)る爺さまにて、いつも長湯の名をあらはし」
③ 獣が怒ったりして低い声を出す。ほえる。
※浄瑠璃・曾我虎が磨(1711頃)下「うなり出でたるあれじしの」
④ 低く鈍い音を出して鳴る。凧(たこ)の音、楽器や鐘の音、虫の羽音などにいう。
※雑俳・柳多留‐一六七(1838‐40)「うなった鐘の脉を引花曇」
⑤ 立派な様子や豪勢な様子などを見て、思わず声を発するほど感心する。芝居で見物人感嘆の声を発する。
※続歌舞妓年代記(1907)二一「見物がうなりました。類なし類なし」
⑥ 羽振りよくする。豪勢にする。また、すばらしい様子をする。
評判記・たきつけ草(1677)「世中にたへておやぢのなかりせば、うなる心はのどけからまし」
金品が豊富にある。あり余る。
浮世草子傾城色三味線(1701)京「江戸へ御下りなされませうば、太夫さまへさぞ置みやげが、うなった事でござりませふ」
⑧ 力が内に積もりあふれてむずむずする。「腕がうなる」

うなり【唸・呻】

〘名〙 (動詞「うなる(唸)」の連用形の名詞化)
① 力を入れたり、苦しんだり、感心したりして出す低い声。うーんとうめく声。
※露団々(1889)〈幸田露伴〉三「びゑゑ会社の徽旗(フラフ)を睨み〈略〉低くして太き呻り声を発したり」
② 獣が怒ったりして出す低い声。ほえる声。
※行人(1912‐13)〈夏目漱石〉帰ってから「嫂(あによめ)の皷膜には〈略〉獣類の吠(ウナリ)として不快に響いたらしい」
③ 凧(たこ)につけて風によって音を起こさせるもの。また、その音。竹、(とう)、鯨のひげなどを薄くそいで弓形にしたものを、凧糸の上の方に付けると、風にあたって強弱のくりかえし音を発する。〔随筆守貞漫稿(1837‐53)〕
④ 低く鈍く断続して鳴る音にいう。風の音、楽器、鐘、機械の音、虫の羽音など。
※葬列(1906)〈石川啄木〉「十二時を報ずるステーションの工場の汽笛が、シッポリ濡れた様な唸りをあげる」
⑤ 振動数がわずかに異なる二つの音波が重なったとき、干渉によって、音が周期的に強くなったり弱くなったりして聞こえる現象。広義には光や電波などの同様の現象についてもいう。ピアノ調律はこの原理を利用して行なう。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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