善隣国宝記(読み)ぜんりんこくほうき

精選版 日本国語大辞典 「善隣国宝記」の意味・読み・例文・類語

ぜんりんこくほうき【善隣国宝記】

室町前期の外交史書。三巻。瑞渓周鳳著。文明二年(一四七〇成立。後人による増補部分もある。上代から室町時代に至る間の中国・朝鮮との外交史と、応永五年(一三九八)以降の外交文書とを主体とする。冒頭神国思想と、足利義満の外交への批判などが注目される。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「善隣国宝記」の意味・読み・例文・類語

ぜんりんこくほうき【善隣国宝記】

室町中期の外交史書。3巻。瑞渓周鳳ずいけいしゅうほう著。文明2年(1470)ごろ成立。古代から室町中期に至る日本と中国・朝鮮半島との外交史と、室町幕府の外交文書などからなる。日本外交の通史であるとともに、室町期の外交の実態を知る基本史料

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「善隣国宝記」の意味・わかりやすい解説

善隣国宝記 (ぜんりんこくほうき)

室町時代の外交書。瑞渓周鳳(ずいけいしゆうほう)著。3巻。1470年(文明2)成立。上巻は1357年から92年までの編年外交史で,おもに虎関師錬著《元亨釈書》が引用されている。中巻は1398年から1475年までの明・朝鮮との間で往復された外交文書,下巻は同じく1433年から86年までの別幅をそれぞれ収めている。このうち1470年以降のものは後人の加筆と考えられる。本書は外交文書作成にあたる臨済僧の規範となり,江戸初期の西笑承兌,金地院崇伝(こんちいんすうでん)にいたるまで参照していたと考えられ,後世まで大きな影響を与えた。本書にみられる対明外交批判は,明法家清原業忠との長年にわたる交際が影響したものと考えられるが,字句の批判にとどまっており,かつて説かれたような《六国史》《神皇正統記》による思想的影響は決定的なものとは考えられない。刊本には《続群書類従》《改定史籍集覧》,国書刊行会のものがあるが,いずれも明暦版を底本としている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「善隣国宝記」の意味・わかりやすい解説

善隣国宝記
ぜんりんこくほうき

和泉(いずみ)国堺(さかい)(大阪府堺市)出身の臨済(りんざい)宗の僧瑞渓周鳳(ずいけいしゅうほう)が著した漢文の外交史・外交文書集。三巻。1466年(文正1)の自序があるので、そのころにいちおうの稿本ができあがり、中巻の後記によって1470年(文明2)に完成したと考えられる。上巻は、古代から14世紀末の1392年(元中9・明徳3)までの僧の往来を中心とする外交の年代記的記述であり、中・下巻は、1398年(応永5)以降の明(みん)や朝鮮と往復した外交文書を収録している。室町時代の外交史の史料として重要である。なお、足利義満(あしかがよしみつ)の外交文書について、義満が日本国王を称したこと、明の暦を使用したことなどを批判している点はよく知られている。『改訂史籍集覧 21』『続群書類従 30輯(しゅう)上』所収、中島竦校訂『新訂善隣国宝記』(1932)がある。

[黒田日出男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「善隣国宝記」の解説

善隣国宝記
ぜんりんこくほうき

中世前期までの中国・朝鮮との交渉の文書集,および年代記。3巻。瑞渓周鳳(ずいけいしゅうほう)編。1466年(文正元)にいったん成立,70年(文明2)完成。明への文書の作成を幕府から求められ,先例を集めたことが編著の動機とされる。上巻は中・下巻の前史となる年代記で,出典を明記しており,「元亨釈書(げんこうしゃくしょ)」からの引用が多い。中巻は1398年(応永5)以降の明・朝鮮との公式文書を,下巻は1433年(永享5)以降の贈答品の目録などを,一部に見解を加えて年代順に収める。収録範囲は後人の追加も含めて86年まで。中世前期の対外交渉史の基礎的な史料。版本で流布し,「続群書類従」所収。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

百科事典マイペディア 「善隣国宝記」の意味・わかりやすい解説

善隣国宝記【ぜんりんこくほうき】

室町時代の外交史書。3巻。相国(しょうこく)寺僧瑞渓周鳳〔1391-1473〕著。1470年成立。上代から15世紀後期までの外交史を記し,中国・朝鮮と幕府との間に取りかわされた公文書などを収める。足利氏の外交政策と日明・日朝関係を知ることができる。なお《続善隣国宝記》《善隣国宝別記》などがある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「善隣国宝記」の意味・わかりやすい解説

善隣国宝記
ぜんりんこくほうき

室町時代の鹿苑院の僧録司,瑞渓周鳳の著。3巻。文明2 (1470) 年成立。周鳳は足利義政に信任されて多くの外交文書を作成したが,本書は外交資料および周鳳の外交批判を著わしている。『続群書類従』所収。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android