噎・咽(読み)むせぶ

精選版 日本国語大辞典 「噎・咽」の意味・読み・例文・類語

むせ・ぶ【噎・咽】

〘自バ五(四)〙 (古くは「むせふ」)
① 煙や異物で喉(のど)が息苦しくなる。飲食物などで息がつまったりせきこんだりする。むせる。
※清輔集(1177頃)「ひとりねて床のうらわに夜もすがらむせふ煙は海士のたく火か」
② こみあげる感情で声がつまる。声をつまらせながら激しく泣く。むせび泣く。
書紀(720)武烈即位前(図書寮本訓)「悲鯁(ムセヒ)て言はく、苦(くや)しきかな。今日、我が愛(うるわ)しき夫(をと)を失ひつる」
③ むせび泣くような声や音をたてる。
源氏(1001‐14頃)幻「物の音もむせびぬべき心ちし給へば」
④ 遣水の流れなどがつかえる。流れがとどこおりつつ水音をたてる。
※兼盛集(990頃)「石まより出づる泉ぞむせぶなるむかしをこふるこゑにやあるらむ」

む・せる【噎・咽】

〘自サ下一〙 む・す 〘自サ下二〙
① 飲食物や煙などが気管にはいって、息がつまったりせきこんだりする。むせぶ。〔十巻本和名抄(934頃)〕
古今著聞集(1254)六「用心なくして吹出しける程に、管中に平蛛のありけるが、喉にのみ入られにけり、むせてはつきまどひける程に」
② 特に、涙がはげしく出て喉(のど)をふさぐ。涙を流す。
※源氏(1001‐14頃)明石「ただわかれむほどのわりなさを思ひ、むせたるも、いとことわりなり」
③ 悲しみなどで、心がふさがる。胸がいっぱいになる。むせぶ。
万葉(8C後)三・四五三「吾妹子が植ゑし梅の木見るごとに情(こころ)(むせ)つつ涙し流る」

む・す【噎・咽】

〘自サ下二〙 ⇒むせる(噎)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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