国栖・国樔(読み)くず

精選版 日本国語大辞典 「国栖・国樔」の意味・読み・例文・類語

く‐ず【国栖・国樔】

[1] 〘名〙 (「くにす(国栖)」の変化した語)
① 大化前代、各地に散在し、非農耕民的な生活様式によって大和政権から異種族と目された人々。
常陸風土記(717‐724頃)茨城「昔、国巣(クズ)〈俗の語に都知久母(つちくも)、又、夜都賀波岐(やつかはぎ)といふ〉山の佐伯、野の佐伯ありき」
② ①のうち、大和国(奈良県)吉野川の川上に住んでいたもの。宮中節会に参り、贄(にえ)を献じ、風俗歌を奏した。くずびと。
※古事記(712)中「此は吉野の国巣(くず)の祖ぞ」
平家(13C前)九「主上わたらせ給へども、節会もおこなはれず、四方拝もなし。鰚魚(はらか)も奏せず。吉野のくずもまゐらせず」
[2]
[一] 奈良県中央部、吉野町の地名。古くから国栖舞が伝わり、特産に吉野紙がある。くにす。国主
[二] (国栖) 謡曲。五番目物。各流。作者未詳。大友皇子に襲われた天武天皇(子方)は都をのがれ、吉野の菜摘川に来る。川岸にいた老人夫婦が根芹(ねぜり)と国栖魚(くずうお)を奉り、追手が来ると舟を逆さにして天皇を隠して助け、夜ふけに消え失せる。やがて天女と、次いで蔵王権現が現われ、天皇を祝福する。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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