国税不服審判所(読み)こくぜいふふくしんぱんしょ

改訂新版 世界大百科事典 「国税不服審判所」の意味・わかりやすい解説

国税不服審判所 (こくぜいふふくしんぱんしょ)

国税(本法では,国税のうち,関税・とん税・特別とん税を除いたもの--内国税--をさす)に関する処分に不服の者が異議申立ての決定後になした審査請求について裁決を行う機関であり,従前の協議団制度にかえて1970年以降国税庁の付属機関として設置されている(国税通則法78条,大蔵省設置法39条1項)。本部ほかに,各国税局の管轄区域ごとに12支部がある。国税不服審判所には,国税庁長官(以下長官と称する)が大蔵大臣の承認を受けて任命する国税不服審判所所長(以下所長と称する)のほかに,審査請求事件の調査と審理を行う国税審判官およびその命を受けて事務を整理する国税副審判官が置かれている。所長の権限の一部は各支部の首席国税審判官に委任されている。

 法令について長官と所長の解釈を調整するために,所長は,長官通達に示された法令解釈と異なる解釈によって裁決するとき,または重要な先例となると認められる裁決をするときは,あらかじめ意見を長官に申し出なければならない。長官は,この申出について所長に指示をするが,所長の意見が審査請求人の主張を認容するものであり,かつ長官が所長の意見を相当と認める場合をのぞき,国税審査会の議決に基づいて指示をしなければならない(国税通則法99,100条)。この規定については,まず国税庁長官がもっぱら法令を解釈して通達を発し,国税庁付属機関の長たる所長はその長官通達に基づいて裁決を行うのが原則であるが,所長は例外的にその意見を長官に申し出ることができる,と解する説がある。国税審査会は,所長が法令解釈権を賦与されていないことの代償として,または長官の指示に公正さを担保しつつ長官と所長の法令解釈の調整を図るための諮問機関である,とされる。他方,所長が法令解釈権をもつと解する見解もある。なお,審査請求は無料であり,審査は比較的迅速(105条1項1号)であるが,その認容率は必ずしも高くはない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国税不服審判所」の意味・わかりやすい解説

国税不服審判所
こくぜいふふくしんぱんしょ

国税に関する法律に基づく処分についての不服申立てのうち,審査請求に対する裁決を行う機関。 1970年にそれまでの協議団の制度を発展させ独立性を強めた機関であり,財務省設置法により国税庁の特別の機関として設置され,その組織,権限などについては国税通則法 78条以下に定められている。審査裁決権を有する国税不服審判所長を長とし,審査請求事件の調査,審理を行う国税審判官とその事務を整理する国税副審判官がおかれている。審査請求の審理は3人以上の国税審判官の合議体が行い,その議決に基づいて国税不服審判所長が裁決する。なお国税審判所の支部が全国 11ヵ所におかれ,その首席国税審判官に国税不服審判所長の権限の多くが委任されている。

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百科事典マイペディア 「国税不服審判所」の意味・わかりやすい解説

国税不服審判所【こくぜいふふくしんぱんしょ】

国税庁の付属機関。1970年国税通則法改正により従来の国税局協議団に代わって設置。国税に関する審査請求の審理・裁決を行う機関で,東京に本部,各国税局所在地に支部(11ヵ所)を置く。国税審判官が配属され,納税者の審査請求に基づき,納税者と税務署の双方の書類等を審理し,審判所長(学識経験者の中から国税庁長官が任命)が裁決する。
→関連項目国税庁

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国税不服審判所」の意味・わかりやすい解説

国税不服審判所
こくぜいふふくしんぱんじょ

国税庁に付置される国税に関する不服審査裁決機関(国税通則法78条)。一般には国税に関し税務署長がした処分について税務署長に異議申立てをしたうえで、その決定に不服のある者がなす審査請求を審理する。国税庁内部の機関ではあるが、税務執行部門からいちおう分離し、独立の裁決権を有し、国税庁長官の通達と異なる解釈をとることも認められているなど、相対的には独立性、中立性を有する。1970年(昭和45)に創設され、本部のほかに各国税局の管轄区域ごとに12の支部が置かれている。

[阿部泰隆]

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