改訂新版 世界大百科事典 「国頭」の意味・わかりやすい解説
国頭 (くにがみ)
沖縄県,沖縄島(本島)の北部地方の総称。沖縄島の2/3を占める。もともと最北端の国頭村の地名であったが,1896年の勅令による郡制の施行で,恩納村,金武(きん)村から北方の地域を国頭郡とした。沖縄島の頭部にあたるので国頭(国上)と呼称したわけである。《おもろさうし》では〈かみ〉と呼び,《明史》などの古文書で〈くにかみ〉とあるのが文献上の初見である。《沖縄県国頭郡志》によって音の転訛を見ると,クニカミ→クニガミ→クンギャミ→クンヂャミ→クンヂャン→クンチャンと変化している。したがってクンヂャンの名称は中国音に似ているがそうではなく,クニカミの変化であることがわかる。また俗に沖縄島南部をさす島尻を下方(しもかた),中部をさす中頭を田舎と呼ぶのに対して,国頭を山原(やんばる)という。これは国頭地方が山林原野に富み,交通不便で僻村が多かったからである。現行の行政区画では,名護市と国頭村,東村,大宜味(おおぎみ)村,今帰仁(なきじん)村,本部(もとぶ)町,宜野座村,金武町,恩納村からなる。
執筆者:田里 友哲
国頭[村] (くにがみ)
沖縄県国頭郡の村。沖縄島(本島)最北端に位置する。人口5188(2010)。沖縄島最高峰の与那覇岳(503m)をはじめ大小の山が脊梁山地を形成し,これらの山が東は太平洋岸,西は東シナ海岸に迫る。山地を開析した川の河口付近に村落が立地する。交通不便な隔絶地域であったため,地縁的共同体意識が強く,1906年に奥村落に沖縄で最初の共同店(村落住民すべてが構成員として出資,運営する商店)が設立され,順次他の村落にも開設されて現在も機能している。1960年代前半までは那覇あたりへの林産物の供給地であり,現在はサトウキビ,パイナップル,茶,花卉,を栽培する農業のほか,豚,肉用牛の畜産も盛んである。近年,道路が整備され,沖縄島最北端の辺戸(へど)岬や茅打(かやうち)バンタ(西海岸の断崖)などの景勝地を訪れる人が多い。
執筆者:堂前 亮平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報