塩化カリウム(読み)えんかカリウム(英語表記)potassium chloride

精選版 日本国語大辞典 「塩化カリウム」の意味・読み・例文・類語

えんか‐カリウム エンクヮ‥【塩化カリウム】

〘名〙 (カリウムKalium) 塩素とカリウムとの化合物。化学式 KCl にがい辛味のある無色の結晶。天然にはシルビンとして産出する。カリウム塩の製造原料やカリ肥料ほかに、消炎火薬の消炎剤、写真試薬、医薬品などにも用いられる。塩化カリ
※恋愛曲線(1926)〈小酒井不木〉「〇・二プロセントの塩化カリウム」

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デジタル大辞泉 「塩化カリウム」の意味・読み・例文・類語

えんか‐カリウム〔エンクワ‐〕【塩化カリウム】

カリウム塩素の化合物。無色の等軸晶系の結晶。工業的にはカーナライトなどから分別結晶で得られ、天然にはカリ岩塩(シルビン)として産し、海水中に少量存在する。化学的性質は塩化ナトリウムに似る。カリ肥料・カリウム塩の原料に使用。塩化カリ。塩加。化学式KCl

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カリウム
えんかかりうむ
potassium chloride

カリウムと塩素の化合物。工業的には塩化カリともよばれる。天然には各種の鉱物、たとえば、シルビンKCl、シルビナイトKCl・NaCl、カーナリットKCl・MgCl2・6H2O、ハルトザルツKCl・NaCl・MgSO4・H2Oとして塩化ナトリウムや硫酸カルシウムの層間に産出する。海水中にも平均0.08%含まれている。水溶性鉱物から塩化カリウムを取り出すには連続溶解法か浮遊選鉱法が用いられる。

 一例としてシルビナイトから粗塩化カリウム(含有率60~70%)を製造する工程をに示す。再結晶法によって精製すれば高純度のものが得られる。無色の結晶性物質であるが、天然産には、不純物のために青色や黄赤色を呈するものがある。純粋なものは潮解性はないが、アルカリ土類塩などを含む粗製塩は吸湿性である。苦い辛味があり、水にはかなりよく溶けるが、アルコールやアセトンには溶けない。粗製品はそのまま肥料として用いられる。精製品は各種のカリウム塩の製造原料として重要であり、実験室では緩衝液や電極液の調製に用いられる。単結晶には、赤外線吸収スペクトル測定用のプリズムやセルの窓としての特殊な用途がある。そのほか熱処理剤、写真試薬、医薬にも使われる。

[鳥居泰男]

医薬用

カリウム欠乏症の治療に医薬用の塩化カリウムが使われる。カリウムは生体内でもっとも大量に存在するイオンで、大部分細胞内に含まれており、これが不足すると細胞の機能障害をおこす。このカリウムイオンの補給に塩化カリウムが内服または注射によって投与される。内服では胃障害を避けるために腸溶皮膜を施した徐放性製剤が用いられる。「スローケー」などがそれである。注射では電解質補正用や心臓手術の際の心停止液として輸液に混ぜて使われる。

[幸保文治]


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改訂新版 世界大百科事典 「塩化カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カリウム (えんかカリウム)
potassium chloride

化学式KCl。塩化カリ,塩加ともいう。天然にはシルビン(カリ岩塩)として産出,海水中に平均0.08%含まれる。無色で結晶は立方晶系。塩化ナトリウムNaCl型構造。苦い辛味を有する。高純度のものは潮解性を示さない。融点776℃,沸点1500℃。比重1.988。屈折率1.4904。水100gに対する溶解度は27.6g(0℃),56.7g(100℃)。エチルアルコールに難溶。メチルアルコールに微溶,アセトン,エーテルに不溶,グリセリンには溶け,水溶液は-10.5℃で含氷晶をつくる。

 塩化カリウムを工業的に得るには,カーナライトKCl・MgCl2・6H2Oなどのカリ鉱石や塩化カリ分を多く含む鹹水(かんすい)からの抽出・精製による。精製には再結晶法を利用する。日本にはこれらの原料資源がないため,カナダ,ロシア,イスラエル,ドイツ,アメリカなどから輸入している。とくにカナダとロシアからの輸入が多い。カリ岩塩を原料とする場合は,適当に粗砕し重液で比重分離すると塩化カリが浮上するので,これを採取精製する。イスラエルでは,死海の鹹水を天日蒸発させカーナライトを取得し,水浸出で塩化マグネシウムMgCl2分を溶かして除いた後,精製している。原料や製法によって灰色または淡紅色を呈する。

 カリ肥料としての用途がほとんどであり,肥料公定規格では水溶性酸化カリウムK2O 50%以上を保証することとなっているが,実際の製品はK2O60%以上が多い。また化成肥料のK2O成分の供給源としての利用もある。そのほか,無機薬品の原料,写真用,緩衝液,塩橋,電極液,赤外線吸収測定時のプリズムやセル窓(単結晶),医薬品,減塩調味料などに使用されている。
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化学辞典 第2版 「塩化カリウム」の解説

塩化カリウム
エンカカリウム
potassium chloride

KCl(74.55).天然にはシルビン,シルビナイト,カーナル石などとして岩塩とともに産出する.これらのカリ鉱石を熱水に溶解し,その飽和水溶液を冷却し,析出させて得られる.海水中には平均0.08% 含まれる.塩化ナトリウムと同様の方法で精製する.結晶は無色の等軸晶系,正六面体結晶.岩塩型構造.格子定数a = 0.6278 nm.K-Cl0.314 nm.苦辛味がある.融点770 ℃,沸点1505 ℃.密度1.98 g cm-3.水100 g に対する溶解度は27.6 g(0 ℃),56.7 g(100 ℃).エタノールに難溶,アセトンに不溶.カリ肥料,カリウム塩の原料として重要である.消炎火薬の消炎剤,写真用試薬,緩衝液,電極液,医薬品にも用いられる.単結晶は赤外吸収測定用のプリズムやセルの窓に用いられる.[CAS 7447-40-7]

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百科事典マイペディア 「塩化カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カリウム【えんかカリウム】

化学式はKCl。比重1.988,融点776℃,沸点1500℃。苦味と塩味がある無色の結晶。塩化カリとも。化学的性質は塩化ナトリウムに似る。天然にはシルビン(カリ岩塩)として岩塩とともに産出し,海水中にも少量存在する。工業的にはカーナライトMgCl2・KCl・6H2Oの水溶液から分別結晶により得る。カリ肥料,カリウム塩の原料,医薬などに多く用いられ,単結晶は赤外線用プリズムなどにも使われる。塩化カリは硫酸カリとともに代表的カリ肥料で,速効性である。
→関連項目カリ肥料

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カリウム
えんかカリウム
potassium chloride

化学式 KCl 。天然にはカリ岩塩として,シュタスフルトなどの岩塩鉱床から採取されている。無色結晶。味は塩辛い。比重 1.99,融点 776℃。塩化カリウム 1gは水 2.8ml,熱水 1.8ml,アルコール 250mlに溶解する。エーテル,アセトンに不溶。水への溶解度は塩酸,塩化ナトリウムあるいはマグネシウムにより下げることができる。 15℃における飽和水溶液の比重 1.17,pH約7。写真工業で多く使われ,また緩衝溶液,肥料,工業原料,化学薬品として用途は広い。経口的に大量にとると胃腸を刺激し,下痢を起す。適量用いれば利尿作用を示す。

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栄養・生化学辞典 「塩化カリウム」の解説

塩化カリウム

 KCl (mw74.55).食塩の摂取量を抑えるために,食塩の一部代替物として使われることがある.

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世界大百科事典(旧版)内の塩化カリウムの言及

【利尿薬】より

…これを水利尿というが,血液量を増加させることによって,ADHの濃度を低下させ,水利尿を起こさせる薬剤である。塩化カリウムや塩化アンモニウム,クロラザニルなどトリアジン誘導体が含まれる。塩化カリウムは肝臓で変化を受けて,塩化水素を生成し,血液を酸性に傾けるため,組織から水分が血液中に移行する。…

※「塩化カリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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