塩化ビニル(読み)エンカビニル

デジタル大辞泉 「塩化ビニル」の意味・読み・例文・類語

えんか‐ビニル〔エンクワ‐〕【塩化ビニル】

アセチレン塩化水素、またはエチレン塩素から合成される、常温無色気体塩化ビニル樹脂原料クロロエチレン化学式CH2=CHCl

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精選版 日本国語大辞典 「塩化ビニル」の意味・読み・例文・類語

えんか‐ビニル エンクヮ‥【塩化ビニル】

〘名〙 (ビニルはvinyl)
① アセチレンと塩化水素との気相反応で、または、エチレンと塩素を原料として合成される物質。化学式 CH2=CHCl 無色の気体。触媒により重合してポリ塩化ビニルを生ずる。塩化ビニル樹脂の合成原料に用いる。

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化学辞典 第2版 「塩化ビニル」の解説

塩化ビニル
エンカビニル
vinyl chloride

chloroethene.C2H3Cl(62.50).CH2=CHCl.工業的には,1,2-ジクロロエタン熱分解(脱塩化水素)してつくられる.この方法の工程は,
(1)エテンと塩素をCuCl2触媒により液相約85 ℃ 以下で反応させ,1,2-ジクロロエタンを合成する,
(2)1,2-ジクロロエタンをアルカリ洗浄および精留後,20~40 atm,約500 ℃ で熱分解し,生じる塩化ビニルを副生塩化水素から分離精製する,
(3)この副生塩化水素は酸素(または空気)とともにさらにエテンと200~300 ℃,常圧ないし加圧下でCuCl2を触媒として反応させ(オキシ塩素化),ふたたび1,2-ジクロロエタンをつくる.

 C2H4 + Cl2 → ClCH2CH2Cl(1) 

 ClCH2CH2Cl → CH2=CHCl + HCl (2) 

 C2H4 + 2HCl + (1/2)O2 → ClCH2CH2Cl+ H2O (3) 

(2)~(3)の繰り返しにより,副生塩化水素は全部利用できる.無色の気体.融点-159.7 ℃,沸点-13.70 ℃.0.9471.ラジカル重合やアニオン重合用の触媒によって容易に重合する.常温で長時間貯蔵する場合にはヒドロキノンなどの重合禁止剤を加える.ポリ(塩化ビニル)塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体などの製造に用いるほか,塩化ビニリデンの原料となる.[CAS 75-01-4]

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改訂新版 世界大百科事典 「塩化ビニル」の意味・わかりやすい解説

塩化ビニル (えんかビニル)
vinyl chloride

エチレンの一塩素化物で,クロロエチレンともいう。化学式CH2=CHCl。無色の気体,融点-159.7℃,沸点-13.70℃。塩化ビニルは,アセチレンに塩化水素を付加させる方法,あるいはまたエチレンに塩素を付加させて1,2-ジクロロエタンCH2Cl・CH2Clとし,これを熱分解して脱塩化水素させる方法などで,工業的に生産されている。塩化ビニルの塩素は二重結合炭素に結合しているため,化学的に不活性で反応性に乏しい。ラジカル重合触媒などにより容易に重合し高分子化合物を生成する。常温で長時間保存する場合はヒドロキノンなどの重合防止剤を加える。単独重合体であるポリ塩化ビニルや,酢酸ビニルCH2=CHOCOCH3などとの共重合体の製造原料として多量に用いられるほか,塩化ビニリデンの原料にもなる。
ポリ塩化ビニル
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百科事典マイペディア 「塩化ビニル」の意味・わかりやすい解説

塩化ビニル【えんかビニル】

化学式はCH2=CHCl。エチレンの一塩素化物で無色可燃性の気体。融点−159.7℃,沸点−13.7℃。アルコール可溶。工業的には,主としてエチレンのオキシ塩素化で生成されるジクロロエタンの熱分解によって得られる。塩化ビニル樹脂,塩化ビニリデン樹脂などの原料として重要。
→関連項目信越化学工業[株]ソーダ工業ダイネル

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化ビニル」の意味・わかりやすい解説

塩化ビニル
えんかビニル
vinyl chloride

化学式は CH2=CHCl 。塩化ビニル樹脂の原料。沸点-14℃,エチルアルコールに可溶。塩化エチルなどの飽和ハロゲン化アルキルに比べて塩化ビニルの塩素は反応性に乏しい。最初,水銀触媒の存在下でアセチレンと塩酸の反応により合成されたが,現在はおもにエチレンと塩素,またはエチレンと塩酸と空気から製造される (オキシクロリネーション法) 。また二塩化エタンの熱分解法,あるいは脱塩化水素によっても得られる。触媒の存在下で容易に重合し,ポリ塩化ビニルとなる。また酢酸ビニルと共重合体をつくる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化ビニル」の意味・わかりやすい解説

塩化ビニル
えんかびにる

クロロエチレン

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栄養・生化学辞典 「塩化ビニル」の解説

塩化ビニル

 合成樹脂の原料として用いられる.

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世界大百科事典(旧版)内の塩化ビニルの言及

【エチレン】より


[用途]
 1981年における日本のエチレン需要は約370万tであり,そのうちの約46%はポリエチレン製造用(高圧法ポリエチレン用が第1位で約28%を占め,さらに低・中圧法ポリエチレンが約18%)である。これに続いて塩化ビニル,アセトアルデヒド,エチレンオキシド,エチレングリコール,スチレンなどが重要な合成化学的用途である(95年のエチレン生産量は約700万t)。エチレンからの主要な誘導体は図1に示すとおりである。…

【オキシ塩素化】より

…炭化水素を塩化水素と酸素または空気を用いて塩素化する反応をいう。炭化水素の塩素化にはふつう塩素が用いられるが,塩化ビニルの製造をはじめとして,炭化水素の塩素化工業の規模が大きくなるにしたがって塩素の不足を生じた。塩素は食塩電解法によって生産されるが,塩素とともに生産される水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)の需要が塩素に比べて少ないので,塩素の生産量が水酸化ナトリウムの需要量によって制約されるからである。…

【化学工業】より

…そのころ,カーバイドからは肥料用の石灰窒素をつくる程度であったが,20世紀に入るとドイツでは,カーバイドに水を作用させてつくるアセチレンを原料として有機化学工業が発達した。アセトン,酢酸,塩化ビニル,合成ゴムなどが開発され,工業化されていった。 他方アメリカでは,1920年代に入ると石油,天然ガスを原料とする化学工業がスタートした。…

※「塩化ビニル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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