多々ますます弁ず(読み)たたますますべんず

故事成語を知る辞典 「多々ますます弁ず」の解説

多々ますます弁ず

数量が多ければ多いほど、都合がよいということ。また、仕事が多ければ多いほど巧みにやってのけること。

[使用例] 大学出という人材の必要からすれば、新建設にいそがしい現在、多々ますます弁ずるというわけだが、りっぱな建物はできても教師が足りない[橘善守*招かれて見た中共|1956]

[由来] 「漢書かんしん伝」に見える、紀元前三世紀、前漢王朝の樹立に大きな功績を挙げた将軍韓信ことばから。韓信は、前漢王朝の初代皇帝、りゅうほうに対して反乱を企て、失敗して捕まってしまいました。その後、劉邦が、将軍たちの能力について、とらわれの韓信と語り合ったことがありました。劉邦が「私は、何人くらいの軍隊を束ねる将軍にふさわしかろうか」と尋ねると、韓信は「一〇万人くらいですね」と答えます。そこで、劉邦が、「では、貴公はどうなのだ」と言うと、「私のような者は『多々益々ますます弁ず(人数が多ければ多いほどやりやすいのです)』と答えた、ということです。ちなみに、劉邦がさらに「ならば、それだけの能力を持つ貴公が、どうして私に捕まってしまったのか」と尋ねたところ、韓信は、「陛下は、将軍たちを束ねる才能をお持ちです。それはいわゆる天から与えられた才能で、人間ではどうにもならないのです」と答えています。

[解説] 同じ話を載せる「史記わいいんこう伝」では、韓信のセリフは「多々益々善きのみ」となっているので、「多々益々善し」の形で使われることもあります。

出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報

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