夜の果てへの旅(読み)ヨルノハテヘノタビ(英語表記)Le voyage au bout de la nuit

デジタル大辞泉 「夜の果てへの旅」の意味・読み・例文・類語

よるのはてへのたび【夜の果てへの旅】

原題、〈フランスVoyage au bout de la nuitセリーヌの処女小説。1932年刊。俗語隠語を駆使した革新的な文体賛否両論を巻き起こした。ルノード賞受賞。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「夜の果てへの旅」の意味・わかりやすい解説

夜の果てへの旅
よるのはてへのたび
Le voyage au bout de la nuit

フランスの作家セリーヌの長編小説。1932年刊。語り手の医学生バルダミュはひょんなきっかけから兵役志願、第一次世界大戦に駆り出されて負傷、戦争を呪(のろ)いつつ別天地を求めて遍歴の旅に出る。しかしアフリカでは植民地支配の醜さをみせつけられ、アメリカでは機械文明に疎外された人間の形骸(けいがい)をみいだすばかり。絶望したバルダミュは娼婦(しょうふ)モリー純愛をも振り切ってパリに戻り、医者を開業。場末の貧民街のいじましい日常に身を沈める。戦場以来行く先々に現れる分身ロバンソンの死。俗語を駆使した破格の文体と、それによってのみ可能なユーモア詩情と醜悪の調和が、この絶望の書を第一級の文学たらしめている。

[高坂和彦]

『生田耕作訳『夜の果ての旅』(中公文庫)』『高坂和彦訳『セリーヌの作品1 夜の果てへの旅』(1985・国書刊行会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「夜の果てへの旅」の意味・わかりやすい解説

夜の果てへの旅
よのはてへのたび
Voyage au bout de la nuit

フランスの小説家ルイ・フェルディナン・セリーヌの小説。 1932年刊。第1次世界大戦に参加して精神肉体に深い傷を負ったアナキストの学生バルダミュと,彼に分身のごとくつきまとうロバンソンの絶望的な彷徨を綴る。第1次大戦後の不安を定着したセリーヌの代表作

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