大山(神奈川県)(読み)おおやま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大山(神奈川県)」の意味・わかりやすい解説

大山(神奈川県)
おおやま

神奈川県中西部、伊勢原市(いせはらし)の北西方にある山。標高1252メートル。丹沢(たんざわ)山地東部の独立峰で、頂上の奇石は古来「石尊(せきそん)様」と崇(あが)められ、阿夫利神社(あふりじんじゃ)の奥の院(本社)の本尊となっている。山頂は霧が多いが、とくに雨に変わりやすく、その量が著しく多くて雨降山(あふりやま)(阿夫利山)ともいわれる。これによって古くから雨乞(あまご)いの神、稲作の神、農業神、また一般産業神として崇められ、とくに乾燥性の相模原(さがみはら)をはじめ武蔵野(むさしの)、常総(じょうそう)台地をもつ関東平野のほか、東海、東北地方南部の諸平野から深い信仰を得るようになった。そして、江戸をはじめ諸地方にくまなく大山講(こう)が設けられ、春山、夏山の両季計30日間には白衣姿の講中登山者が大山に集まり、いまも続けられている。また、大山川(鈴川)の渓流沿いには信仰登山者が休泊する宿場町(御師町(おしまち))が発達し、いまも旧道沿いには、古いおもかげを残す御師(先導師)家の町並みが続き、参拝講中や消防組、建設業者や料理飲食業者などの団体・同業組合の記念碑が目だち、全国でも数少ない信仰登山集落の好例である。

 大山山頂からの眺望は広大で、山頂から中腹にある下社あたりまでは広葉樹林に覆われ、そのなかに針葉樹モミ原生林がみられる(県指定天然記念物)。大山の中腹、大山登山ケーブルの不動前の大山寺(たいさんじ)(大山不動)はもと石尊権現(ごんげん)の別当寺であったが、明治初年の神仏分離の結果、本寺が阿夫利神社となり、その坊が合併、再興して大山寺を名のったもの。小田急電鉄伊勢原駅からバス、ついで大山登山ケーブルで下社へ、そこから頂上へは徒歩1時間半。

[浅香幸雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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