日本大百科全書(ニッポニカ) 「大麻(民俗)」の意味・わかりやすい解説
大麻(民俗)
たいま
「おおぬさ」ともいう。神道(しんとう)儀礼における祓(はらえ)の具。現在普通にみるものは、榊(さかき)のやや長めの枝に麻苧(お)と白幣とを取り付け、あるいは略して白幣だけを取り付けたもので、これを参拝者の頭上で振ることによって罪穢(つみけがれ)を祓(はら)うというものである。しかしもともとヌサとは神に捧(ささ)げる布類のことであって、それが多くは麻地であったところから、その文字を麻とするようになった。日本人は神も人と同じように生活していると信じたから、神祭りには食物とともに衣料も捧げねばならぬと考えた。それがヌサのおこりであった。それで、旅をするときにもつねに麻を小さく裁断して携行し、これを行く先々の神に手向けた。これが切麻(きりぬさ)である。一方、罪穢を祓うには、これを人形(ひとがた)に負わせて流しやればよいという考えがあったため、やがて人形のかわりに衣装、さらには布地を用いる風も生じた。祓の具としての大麻は、これがさらに形式化され、整備されたものと考えられる。
[石塚尊俊]