天体暦(読み)てんたいれき(英語表記)astronomical ephemeris

精選版 日本国語大辞典 「天体暦」の意味・読み・例文・類語

てんたい‐れき【天体暦】

〘名〙 諸天体の位置距離光度出没日食月食掩蔽(えんぺい)など、天体観測に必要な事柄を記載した年刊暦。天文学や航海などで用いる。天体日表。〔工学字彙(1886)〕

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デジタル大辞泉 「天体暦」の意味・読み・例文・類語

てんたい‐れき【天体暦】

太陽惑星恒星などの位置のほか日食月食日月の出没などの天文現象を記載した年間暦。天体観測・暦計算・天文航法などに利用

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改訂新版 世界大百科事典 「天体暦」の意味・わかりやすい解説

天体暦 (てんたいれき)
astronomical ephemeris

太陽,月,惑星,小惑星,衛星などの推算位置や基本星の平均位置と固有運動,さらに日月食,えんぺい,日月出没などの予報値を掲載した年刊暦。各種の天文観測の際に使われるほか,航海暦や簡略天文年表の編纂へんさん)にも利用され,この種のものでは最高の精度を備えたものである。日本の天体暦には《天体位置表》があるが,外国では仏暦Connaissance des Temps(1679創刊,経度局発行),英暦Astronomical Ephemeris(旧称Nautical Almanac,1767創刊,グリニジ天文台発行),独暦Berliner Astronomisches Jahrbuch(1776創刊,天文計算局発行,1959廃刊),スペイン暦Efemérides Astronomicas(旧称Almanaque Nautico,1791創刊,海軍天文台発行),米暦American Ephemeris and Nautical Almanac(1855創刊,海軍天文台発行),ソ連暦Astronomicheskii Ezhegodnik(1922創刊,理論天文学研究所発行),インド暦Indian Ephemeris(1957創刊,気象局)がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天体暦」の意味・わかりやすい解説

天体暦
てんたいれき

1年間の諸天体の位置や、これら諸天体の間におこる諸現象の予報値を記載した暦書。元来、航海者のために生まれたものであるが、20世紀に入って天文学専用となった。推算された位置を観測と比較することによって、その根拠となる力学的理論と、これに使用する諸定数を検証するためである。世界の主要な天体暦は、1679年フランス経度局が創刊したフランス暦Connaissance des Temps、1767年からイギリス、グリニジ天文台が刊行しているイギリス暦Astronomical Ephemeris(旧称Nautical Almanac)、1855年以来アメリカ海軍天文台が刊行しているアメリカ暦American Ephemeris and Nautical Almanacがある。日本では1943年(昭和18)以来、水路部(戦前は海軍、戦後は海上保安庁に属す)から出版される『天体位置表』があったが、平成22年(2010)版で刊行終了した。1776年からドイツ、ベルリン天文計算局が発刊していたドイツ暦Berliner Astronomisches Jahrbuchがあったが、1959年廃刊となった。航海暦、常用暦は天体暦から編纂(へんさん)される。恒星の視位置については別にドイツ、ハイデルベルクの天文計算局が出している恒星視位置表Apparent Places of the Fundamental Starsがある。

 なお1976年の国際天文学連合総会で決まった新しい天文定数系に基づく暦が1984年から国際的に実施されることになり、日本では1985年から新しい暦に移行した。

[渡辺敏夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天体暦」の意味・わかりやすい解説

天体暦
てんたいれき
astronomical ephemeris

1年間にわたり天文観測に必要な太陽,月,惑星,おもな恒星の天球上の位置をはじめ,観測に必要なすべての資料が網羅されている。たとえば暦表時 ET0時における太陽,月,惑星の毎日の視赤経,視赤緯,視半経,地平視差,おもな恒星の 10日ごとの赤経,赤緯,世界時 UTと恒星時との関係,日食月食,恒星食 (→掩蔽 ) などの天文現象,恒星の位置計算に必要な日数などが記載されている。現在最も権威ある天体暦はフランス暦,イギリス暦,ドイツ暦,アメリカ暦,天体位置表 (海上保安庁作成) であって,各年度の天体暦は2~3年前に出版されるのが普通である。

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世界大百科事典(旧版)内の天体暦の言及

【位置天文学】より

…地球運動研究は地球物理学・測地学とも密接に関連する。(3)天体暦の計算 引力則と力学の法則に基づき,月,惑星の位置・運動を計算する。単なる計算技術ではなく天体力学による計算理論,計算の基礎となる天文定数,惑星などの質量の決定などの研究が重要課題となる。…

【中国天文学】より

…こうして漢代に〈太初暦〉(前104)が公用されてから清末に至るまで,50回以上も改暦が行われた。漢代以降の暦法は単に月日を配当するだけのものでなく,日・月食を予報し惑星の位置を計算するものに拡張され,〈天体暦〉の内容をもつようになった。したがって暦法を通じて主要な天文知識の発達を知ることができる。…

※「天体暦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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