改訂新版 世界大百科事典 「天皇海山列」の意味・わかりやすい解説
天皇海山列 (てんのうかいざんれつ)
Emperor Seamount Chain
カムチャツカ東方,東経170°線に沿ってほぼ南北に連なる海山列。北緯32°付近で東南東に向きを変えハワイ島にいたるが,この部分はハワイ海嶺という。1952年田山利三郎はこれに北西太平洋海嶺と命名したが,ディーツR.S.Dietzは日本水路部の海底地形図を研究してこの海山列を知り,54年Emperor Seamountsと命名し,個々の海山に天智,神武,推古,仁徳,神功,応神,欽明,雄略,桓武など古代天皇の名を付し有名となった。これらの海山の多くはギヨーで,玄武岩からなる。ハワイ海嶺から天皇海山列にいたる海山の成因は,マントルプリュームとプレート運動により説明される。地球表面にはアセノスフェアからたえず熱対流が上昇している地点(マントルプリュームまたはホットスポット)があり,ここでは常にマグマが生産され火山活動がおこっている。この上をプレートが通過するとこの地点の上には火山が生じ,通過したプレートの上には死火山,さらにはサンゴ礁,環礁,ギヨーなどが順々に残されていく。ハワイ海嶺から天皇海山列にいたる火山や海山の岩石の放射性年代測定,サンゴ礁掘削による生成年代の測定などから,これらの火山や海山の年代とハワイ島キラウェア火山からの距離との関係を調べると,プレートの移動速度は約8.5cm/年で,驚くほど一定している。またハワイ海嶺と天皇海山列の屈曲点はほぼ4000万年の時代を示し,この時代に太平洋プレートは北北西から西北西へ移動方向を変えたことがわかった。
執筆者:佐藤 任弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報