太山寺(兵庫県)(読み)たいさんじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「太山寺(兵庫県)」の意味・わかりやすい解説

太山寺(兵庫県)
たいさんじ

兵庫県神戸市西区伊川谷町前開(ぜんかい)にある天台宗の寺。三身山(さんしんざん)と号する。本尊薬師如来(にょらい)で、太山寺薬師として知られる。新西国三十三所第25番札所。寺伝によると、藤原鎌足(かまたり)の発願により、その長男定恵(じょうえ)が716年(霊亀2)に法相(ほっそう)宗として開山し、藤原宇合(うまかい)(鎌足の孫)が諸堂を建て、造立した七体の薬師仏の一体を安置したと伝える。元正(げんしょう)天皇(在位715~724)の勅願所となり、白河(しらかわ)・後宇多(ごうだ)・崇光(すこう)天皇も臨幸。中世には多数の僧兵を抱え、41坊の塔頭(たっちゅう)をもつ播磨(はりま)きっての巨刹(きょさつ)であった。建武(けんむ)新政では大塔宮護良(だいとうのみやもりなが)親王の令旨(りょうじ)を受け、当寺の衆徒を送って支援した。のち漸次衰微したが、現在、本堂阿弥陀(あみだ)堂、仁王(におう)門、三重塔、護摩堂などが建ち並ぶほか、塔頭安養院(あんよういん)などが盛時を伝える。本堂は鎌倉末期の建立で和様唐(から)様折衷の代表的遺構であり国宝に、また同時代の仁王門は国重要文化財に指定されている。そのほか、絹本着色不動四童子像、同両界曼荼羅(まんだら)図二幅、同白衣観音(びゃくえかんのん)像、同十六羅漢像、紙本墨書『法華経(ほけきょう)』など国の重要文化財が多数ある。そのうちの大塔宮令旨および注進状四通は、中世の太山寺の勢威を知る貴重な資料である。

[田村晃祐]


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