嬉遊笑覧(読み)きゆうしょうらん

精選版 日本国語大辞典 「嬉遊笑覧」の意味・読み・例文・類語

きゆうしょうらん キイウセウラン【嬉遊笑覧】

江戸時代後期の随筆集。一二巻、付録一巻。喜多村信節(のぶよ)著。文政一三年(一八三〇成立江戸時代の風俗習慣、歌舞音曲などを中心に、諸書から抄録して私見を加えたもの。古今の庶民生活の具体的な諸相を伝えるものとして重要視される。

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デジタル大辞泉 「嬉遊笑覧」の意味・読み・例文・類語

きゆうしょうらん〔キイウセウラン〕【嬉遊笑覧】

江戸後期の随筆。12巻。付録1巻。喜多村信節きたむらのぶよ著。文政13年(1830)成立。諸書から江戸の風俗習慣や歌舞音曲などを中心に社会万般の記事を集め、28項目に類別して叙述したもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「嬉遊笑覧」の意味・わかりやすい解説

嬉遊笑覧
きゆうしょうらん

江戸後期の随筆。12巻、付録1巻。喜多村筠庭(いんてい)(節信(ときのぶ))著。文政(ぶんせい)13年(1830)序。江戸時代の風俗に関する百科事典ともいうべきもので、「居所」(建物、庭、置物など)、「容儀」(髪型、化粧など)、「服飾」(服装・装身具など)以下、「草木」に至るまで27部門に類別し、4000余項目について、和漢古今の文献を広く引用し、詳しく解説するが、挿絵はない。付録1巻は「或問(わくもん)付録」とあるように、問いに対する答えの形式をとり、内容雑多な196項目よりなる。

 序文に、長年抄記しておいた反古(ほご)の散乱を惜しみ、これらを体系だてて整理、浄書したものであると自ら記すが、これが本書の際だった特色となっている。記述は江戸の町に偏りぎみで、また著者の一癖ある人柄も反映して、人をそしる文章もままみられるが、「古書をもつて徴とする」という態度と知的好奇心の旺盛(おうせい)さが、本書を江戸風俗を知るための第一の書たらしめている、といってもけっして過言ではない。

[宇田敏彦 2015年10月20日]

『『日本随筆大成 別巻 嬉遊笑覧1~4』(1979・吉川弘文館)』

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改訂新版 世界大百科事典 「嬉遊笑覧」の意味・わかりやすい解説

嬉遊笑覧 (きゆうしょうらん)

江戸時代の類書喜多村節信(ときのぶ)著。12巻,付録1巻。文政13年(1830)自序。分類編成の内容は風俗的な事象で,記述は古文献による考証である。分類は居処・容儀(巻一),服飾・器用(巻二),書画・詩歌(巻三),武事・雑伎(巻四),宴会・歌舞(巻五),音曲・翫弄(巻六),行遊・祭祀・仏会(巻七),慶賀・忌諱・方術(巻八),娼妓・言語(巻九),飲食・火燭(巻十),商賈・乞士・化子(巻十一),禽虫・漁猟・草木(巻十二)。本文は2系統に分かれる。著者はのちに画入り考証による新編を考えていたらしい。近世風俗の研究に欠かせない書である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「嬉遊笑覧」の意味・わかりやすい解説

嬉遊笑覧
きゆうしょうらん

江戸時代後期の随筆。 12巻,付録1巻。喜多村信節 (のぶよ) 著。天保1 (1830) 年刊。各巻上下2章から成り,主として江戸時代の市井風俗,歌舞音曲などについて,多くの書から抄録したものに考証を試みたもの。江戸時代の風俗芸能研究に不可欠な資料。

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百科事典マイペディア 「嬉遊笑覧」の意味・わかりやすい解説

嬉遊笑覧【きゆうしょうらん】

江戸時代の随筆。喜多村節信(ときのぶ)〔1783-1856〕著。12巻,付録1巻。1830年自序。おもに江戸時代の風俗習慣,芸能,文学等につき考証を加え,諸書の説を抄録したもの。近世庶民生活を知るうえに重要な書。著者は【いん】庭(いんてい),【いん】居などと号し,江戸生れの国学者,考証家。

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