安寿/厨子王(読み)あんじゅ/ずしおう

朝日日本歴史人物事典 「安寿/厨子王」の解説

安寿/厨子王

中世の説経節に登場する姉弟。奥州54郡の領主岩城判官正氏の子である姉と弟。追放された父母のあとを追う途中,人買いにだまされ,丹後(京都府)由良山椒(荘)太夫の許に連れられてきて,そこで酷使される。姉の安寿は,弟厨子王逃亡を助け,捕らえられて死んでしまう。厨子王は,さまざまな危難を克服し,両親と再会したのち,山椒太夫鋸引きの刑に処して報復した。この話は,中世の語り物のなかに普遍化し,説経節として流布したが,一方青森県津軽地方では,盲目の巫女であるイタコによって,岩木山の女神となった安寿姫の由来が語られている。山椒太夫との関係から,丹後の人が岩木山に登ると天気が荒れるという口碑も生まれている。長者山椒太夫の没落譚と厨子王の出世の話に岩木山信仰が結びついて,物語ができ上った。

(宮田登)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

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