安心(読み)あんしん

精選版 日本国語大辞典 「安心」の意味・読み・例文・類語

あん‐しん【安心】

〘名〙 (「あんじん」とも)
① (━する) 心が安んじること。気がかりなことがなくて、心が落ち着くこと。
※玉塵抄(1563)九「順神精神をやしなうぞ。安心のことぞ」
歌舞伎蔦紅葉宇都谷峠(文彌殺し)(1856)三幕「『すっぱり思ひきりました』『ええ、それで安心いたしました』」 〔白居易‐得微之到官書、備知通州之事、悵然有感詩〕
② (形動) 心が安らかで心配のないこと。また、そのさま。
滑稽本東海道中膝栗毛(1802‐09)八「順慶町のうらなひしゃがことば、おもひ合せて安心ならねども」
③ (あんじん) 仏語。信仰によって、心が不動の境地に達すること。浄土教では、特に阿彌陀仏を信じて疑わないこと。
※大応国師法語(1308頃)「唯此安心安楽の処を伝へて」
※仮名草子・竹斎(1621‐23)上「いかに皆々女房たち。大事のあんじんをば説き残したるぞ」 〔景徳伝燈録‐三〕
④ 内心のくふうをすること。奥義に達するための心づかい。
花鏡(1424)万能綰一心事「是は、為手(して)の秘する所の安心なり」
[語誌](1)儒教の安心立命の語から出て、禅僧菩提達磨(ぼだいだるま)仏教徒として初めて用いた。
(2)中・近世には連濁形アンジンが広く使われており、「文明本節用集」「日葡辞書」「易林本節用集」「運歩色葉集」は、みなアンジンである。
(3)「安心」と「安堵」は現代語で意味が類似するが、「安心」には、形容動詞的用法があるのに対して、「安堵」にはそれがないという違いがあり、また、「安心」は、より持続的な事態を表現し、「安堵」は、かなり瞬間的な事態を表現する。

あん‐じん【安心】

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デジタル大辞泉 「安心」の意味・読み・例文・類語

あん‐しん【安心】

[名・形動](スル)
気にかかることがなく心が落ち着いていること。また、そのさま。「列車で行くほうが安心だ」「安心して任せられる」
あんじん(安心)
[類語]心強い気強い気丈夫心丈夫安堵一安心気休め安全大丈夫無事安泰平安小康確実無難無害穏やか平穏平らか温和安寧あんねい安穏あんのん事無しセーフティー無毒

あん‐じん【安心】

仏語。
仏法の功徳によって、迷いがなくなった安らぎの境地。
阿弥陀仏の救いを信じて、浄土往生を願う心。

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改訂新版 世界大百科事典 「安心」の意味・わかりやすい解説

安心 (あんじん)

仏法によって心の安定を得ること。儒教の〈安心立命〉より出た語。各宗派の定める教義や実践法によって信仰を確立すること,あるいはその方途をいう。したがって諸宗によって意味内容を異にする。最も早く安心の語を用いたのは禅宗で,《続高僧伝》巻十六の菩提達磨の伝に,彼が壁観によって仏道と冥合したことに用いた。天台宗では,智顗(ちぎ)が止観を達成して法性(ほつしよう)の理に安住することを表した。善導以後,浄土系諸宗では広くこの語を用い,阿弥陀仏の救いを信じて往生を願う心を表現した。善導は《観無量寿経》の説く三心(至誠心,深心,回向発願心)を往生の正因とし,三心具足の念仏を説いたが,浄土宗(鎮西)では,安心に総・別を立て,往生を願う別安心のほかに,通仏教的な菩提心を総安心とし,西山派では,自力を捨て弥陀の弘願に帰する領解(りようげ)の心を安心とし,真宗では,弥陀をたのむ信の一念の起こるところを安心決定とする。
異安心
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普及版 字通 「安心」の読み・字形・画数・意味

【安心】あんしん

心をしずめ、欲望がない。晋・張華〔励志〕詩 心を安んじて恬(てんたう) 志を雲に棲ましむ

字通「安」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「安心」の意味・わかりやすい解説

安心
あんじん

阿弥陀仏の救済を説く浄土門では,阿弥陀仏の救済を信じ極楽往生を絶えず求める心をいう。これを分類して至誠 (しじょう) 心,深 (じん) 心,回向発願 (えこうほつがん) 心の3種であるという。浄土門以外の,自身の力に依存して悟りを得るとする聖道門 (しょうどうもん) では,自身の心を落ち着かせ,安定することをいう。

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デジタル大辞泉プラス 「安心」の解説

安心

マキノ出版が刊行していた月刊の健康雑誌。ダイエット、美容、健康法などに関する情報を紹介。1983年創刊。2023年7月号より株式会社ブティック社より隔月刊で発行。

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