宝くじ(読み)たからくじ

改訂新版 世界大百科事典 「宝くじ」の意味・わかりやすい解説

宝くじ(籤) (たからくじ)

当せん金付証票法(1948公布)および宝くじ運営方針(1969年自治省財政局長通達)に基づいて発売される当せん金品付抽せん券。正称は当せん金付証票。

宝くじの前身は江戸時代に盛んに行われた富くじであるが,1868年(明治1)に明治政府により禁止された。復活したのは1945年7月の勝札(かちふだ)である。これは,政府が軍事費調達のため臨時資金調整法(1937公布)に基づき発行したものであるが,抽選をまたずに敗戦となった。同年10月に宝くじの名称で〈政府第1回宝籤〉が発行された。勝札同様,臨時資金調整法に基づき,浮動購買力を吸収し復興資金にあてるものであった。1枚10円,1等賞金10万円だが,副賞にキャラコ2反があり,また外れ券4枚でタバコ10本がついたことから人気をよんだ。さらに46年の法律改正で地方自治体の発行も可能となり,またその場で賞品のタバコ等がもらえるスピードくじの発行などにより,物不足時代にブームとなった。48年に臨時資金調整法の廃止に伴い,当せん金付証票法が制定され,宝くじの基本線が定められた。翌49年に政府,都道府県に加え,五大市,戦災都市の発行も認められていった。そして54年に政府くじが廃止され,地方自治体のみが発行者となり,ブロックごとの自治体の連合くじの形態として,現在の全国自治,東京都,関東・中部・東北自治,近畿,西日本の5種にまとまっていった。さらに60年代後半から特別なくじとして,万国博覧会(1968-70),札幌オリンピック(1970-72),沖縄海洋博覧会(1973-75)などの協賛宝くじ,また,へき地医療振興宝くじ(自治医科大学資金調達。1974-)が発行された。なお,94年に始まった〈ナンバーズ〉は,3けたもしくは4けたの数字を購入者が自ら選択する方式の宝くじで,当せん金額は発売額と当せん者数によって変動する。また,サッカーJリーグの試合結果にかけるサッカーくじが98年〈スポーツ振興投票実施法〉によって認められ,2000年春から日本体育・学校健康センター(文部科学省所管の特殊法人)によって実施されることとなった。

 一方,宝くじも大型化し,1968年に1等賞金が1000万円(1枚100円)になった。70年代にはいり,インフレ傾向やギャンブル熱を反映して宝くじブームがおこり,76年12月には福岡,松本の宝くじ売場で混雑により死者が出る事件まで発生している。その反省に基づき,77年から大型くじについて,往復はがきによる予約発売制が実施された。この結果,予約申込状況によって発売額を調整できるようになり,発売額の大幅な増加を導いた。さらに78年から1枚200円,1等賞金2000万円,80年から1枚300円,1等賞金3000万円の予約宝くじジャンボ宝くじ)も発売された。この結果,1970年代後半からの発売額は著しい伸びをみせ,1945年から95年度末までの累計額では8兆8284億円に達している。また,ジャンボ宝くじの1等賞金は,96年には1億円を実現するまでに大型化した。

宝くじは地方自治体が総務省の許可を受け発売するが,それ以外の団体や個人が行うことは禁止されている。発売,当せん金支払等の事務は第一勧業銀行(現,みずほ銀行)が受託して行っている。通常の宝くじの費用の内訳は,当せん金46.2%,自治体の収益金39.8%,手数料7.3%,印刷,宣伝等の経費3.8%,日本宝くじ協会を通じての助成活動2.9%である。地方自治体の収益金は1980年代に毎年1000億円以上,90年代半ばには3000億円以上になっているが,その使途は公営住宅建設,教育施設改良,道路橋梁建設等である。現在の宝くじは,番号のはいった抽せん券を買い,その後の抽せんにより当せんした券について金品を交付するやり方を基本としているが,前記の〈ナンバーズ〉は方式が異なる。また宝くじの1枚当りの当せん金は発売価格の10万倍相当額までであること,当せん金に所得税がかからないこと,当せん金は支払開始日から1年で時効になること,などが定められている。

外国でも宝くじ・富くじは盛んで,世界の約100ヵ国が富くじを発行しており,国際機関である国営富くじ国際協会には,1982年現在で59ヵ国が加盟している。1981年度の主要国の販売額をみると,アメリカ6372億円,西ドイツ5785億円,スペイン5243億円,フランス3154億円などで,同年の日本の販売額2508億円を大きく上回っている。日本の宝くじと同様に,あらかじめ番号の記入されている抽せん券を購入する方法があるが,変わったものでは,購買者が自分で好きな数字を選び,マークして売場に申し込む〈ロト〉(西ドイツ,フランス等),〈ナンバーズ・ゲーム〉(アメリカ)の方式もあり,日本で導入された〈ナンバーズ〉と同様である。また1回で数億円になる高額賞金のくじがある例も知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宝くじ」の意味・わかりやすい解説

宝くじ
たからくじ

地方自治体の財政資金の調達に資する目的で発売される当選金品付き抽選券のこと。正称は当せん金付証票。当せん金付証票法(昭和23年法律第144号)に基づいて発行される。

 宝くじは富籤(とみくじ)の一種である。日本においては、江戸時代には江戸、京都、大坂の三都で社寺の再建・修理に際して富籤興行が頻繁に行われたが、1868年(明治1)に明治政府によって禁止された。第二次世界大戦末期の1945年(昭和20)7月、戦費調達のため、臨時資金調整法(昭和12年法律第86号)に基づいて勝札(かちふだ)が発行されたが、これが明治以降初めての富籤である。この勝札は、抽選を待たずに敗戦となったため、敗札(まけふだ)の異名をとった。同年10月、宝くじという名称が取り入れられて、政府による第1回宝くじが発行された。根拠法規は勝札と同様に臨時資金調整法であり、敗戦直後の浮動購買力を吸収し、復興資金にあてるためのものであった。1枚10円、一等当選金10万円、副賞金巾(カナキン)50ヤール付き、外れ券4枚で当時配給制だったたばこ10本がついたことから、爆発的人気となった。翌1946年には法改正で都道府県でも発行できるようになり、その第一号として福井県復興宝くじが発行された。またその場でたばこなどの賞品がもらえるスピードくじも発行され、物資不足・インフレ時代にブームをよんだ。1948年には臨時資金調整法の廃止に伴い、当せん金付証票法が制定され、日本勧業銀行(現、みずほ銀行)が発行業務を受託することになり、宝くじ制度の基本ができあがった。1954年に政府宝くじが廃止され、都道府県と政令指定都市のみの発行となり、しだいに現在の全国、東京都、関東・中部・東北、近畿、西日本の5ブロック別発行(別に栃木県のみ単独発行)にまとまっていった。1964年には財団法人日本宝くじ協会が発足し、宝くじ制度の育成にあたっている(2014年に一般財団法人へ移行)。

 宝くじの1枚当り賞金の最高額は、当初、発行価額の20万倍を超えない範囲の額とされていたが、その後、当せん金付証票法の改正が重ねられ、2012年(平成24)の改正で250万倍(加算型当せん金付証票の場合は500万倍)まで可能となった。賞金の最高額はしだいに大型化し、1968年には前後賞をあわせて1000万円であったが、1989年(平成1)には1億円、2012年には5億円、2015年には10億円となった。なお、その賞金には所得税がかからないことになっている。

 また宝くじの種類も、従来の方式以外に「数字選択式宝くじ」として、ナンバーズ(3桁または4桁の数字を申し込むもので、毎週5回抽選)、ロト(種類に応じて5~7個の数字を選択するもので、毎週抽選)、ビンゴ5(ファイブ)(縦・横3枡(ます)の9個の枡目のうち、中央を除いた8枡にそれぞれ1個ずつ、計8個の数字を選ぶもので、毎週抽選)、また宝くじに隠された部分をその場ではがし、当選を確かめるスクラッチなどが出現している。こうした賞金の大型化、種類の多様化などによって、ほかのギャンブル(競輪、競馬、競艇、オートレース)が軒並み売上げを落とすなかで、宝くじのみは売上げを増加させ、1984年度の2983億円から2005年度には1兆1047億円に達した。しかしその後は漸減し、2020年度(令和2)は8160億円となっている。その売上額は、当選金47.0%、自治体の収益金37.2%、残りの15.7%が手数料、印刷・宣伝などの経費、日本宝くじ協会を通じての助成活動費などに配分される(億円未満四捨五入のため合計が一致しない)。地方自治体はこの収益金をおもに公営住宅建設、教育施設建設改良、道路橋梁(きょうりょう)建設などの公共事業費にあてており、その財源の重要な一部となっている。

 なお前記宝くじのほかに、2001年からスタートしたサッカーくじ(スポーツ振興投票、通称toto(トト))がある。文部科学省所管の、スポーツ振興に資するもので、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の指定された13試合の勝敗または引分けを当てるものであるが、その売行きはいま一つの感があった。このような売上げの低迷を打開すべく、2006年9月からコンピュータがランダムに選択し、購入者が予想する必要がなく簡単に購入できるBIG(ビッグ)の販売が開始された。

[一杉哲也・羽田 亨 2022年6月22日]

外国の宝くじ

海外諸国でも、財政資金の調達などを目的に宝くじ・富籤は盛んで、100か国以上の国々で発行されており、国際機関である世界富くじ協会(WLA:World Lottery Association)には、日本を含めて80か国が加盟している(2022年時点)。外国の宝くじは、日本の宝くじと同じ類型が多いが、そのなかには当選者がいない場合に賞金が次回へ繰り越されて累積するため、1回で十数億円の賞金がつくものもある。

[一杉哲也・羽田 亨 2022年6月22日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宝くじ」の意味・わかりやすい解説

宝くじ
たからくじ

当せん金付証票法(昭和23年法律144号)に基づいて発売される当選金品付抽選券。各都道府県,政令指定都市もしくは総務大臣が特別の必要を勘案して指定する市が発売し,調達された資金は公共事業の財源にあてられる。1945年7月に 1回だけ発売された「勝札」が第2次世界大戦終了に伴って改称されたもので,同年10月に第1回が発売された。その根拠法規は臨時資金調整法(昭和12年法律86号)であったが,同法は 1948年4月に廃止され,同年7月に現行の当せん金付証票法が制定発布された。当初は政府も発行したが,1954年度かぎりで廃止。

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