宣・曰(読み)のたまう

精選版 日本国語大辞典 「宣・曰」の意味・読み・例文・類語

の‐たま・う ‥たまふ【宣・曰】

〘他ハ四〙 (動詞「のる(宣)」に四段活用動詞「たまう(賜)」の付いた「のりたまう」の変化したもの) 上位から下位へいう、告げ知らせるの意を表わすのが原義で、そこから、上位者の「言う」動作を敬っていう場合と、単に、言ってやる、申し聞かせるの意の場合との二面が生じたものと考えられる。のたぶ。のとうぶ。
① 「言う」「告げる」の尊敬語で、その動作主を敬う。おっしゃる。言っておやりになる。また、お言いつけになる。
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「王、卿を召せと令(ノタマフ)
② 上位者の言を仲介して他に言う。申し聞かせる。
※竹取(9C末‐10C初)「女に内侍の給、『仰せごとにかぐや姫のうち優におはす也、よく見て参るべき由の給はせつるになん参りつる』と言へば」
③ 尊者に対するかしこまり改まった表現(会話・消息・勅撰集詞書など)において自己または自己側の者の「言う」に用い、第三者に対し「言ってやります」「申し聞かせます」の意を表わす。言う相手が低められることによって、へりくだった言い方になる。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「立ちぬる月にも、おもとの御ことのたまひかたらはむとて罷りたりしかば」
④ (特に現代語では敬語としてでなく) 「言う」をからかい半分のふざけた言い方としていうのに用いる。のたまわす。
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「アアモウ解ッた解ッた、何にも宣(ノタマ)ふナ」
[語誌](1)上代にも「のたばく(宣━)」の形はあるので「のたまう」の存在も考えられるが、万葉仮名書きの確例は見られない。中古では、「のたまわす」「おおせらる」などが最高の敬度であるのに対し、「のたまう」はそれにつぐ敬度を持ち、「せ(させ)たまう」に対する「たまう」程度の尊敬語として広く用いられた。
(2)①の意は、文脈によって、「多武峰少将物語」の「いとあさましきわざかな。御はらからの君たちも、おのれをこそ、のたまはめ」のような「わるくおっしゃる」「恨んでおっしゃる」の意や、「宇津保‐俊蔭」の「ただこの人のみおもほえ給へば、ちぢにちぢに思ひくだくれど、のたまふべき人しなければ」のような「相談をおかけになる」の意になる場合もある。

の‐とう・ぶ ‥たうぶ【宣・曰】

〘他バ四〙 (動詞「のる(宣)」に四段活用動詞「とうぶ(賜)」の付いた「のりとうぶ」の変化したもの。一説に、「のたまう」また「のたぶ」からの変化とも) 「のたまう(宣)」に同じであるが、下位に申し聞かせる気持が強く、尊敬語として用いたものは、敬度がやや低いと考えられる。
蜻蛉(974頃)下「きんぢが寮の頭の、去年よりいとせちにのたうぶことのあるを」
古今(905‐914)恋二・五八九・詞書「もののたうびける人のもとに、また人まかりつつせうそこすとききて」

の‐たもう ‥たま・ふ【宣・曰】

〘他ハ四〙 ⇒のたまう(宣)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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