宮崎(市)(読み)みやざき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宮崎(市)」の意味・わかりやすい解説

宮崎(市)
みやざき

宮崎県中部臨海に位置する県庁所在地。1924年(大正13)市制施行。1932年(昭和7)檍(あおき)村、1943年赤江(あかえ)町、1951年(昭和26)瓜生野(うりゅうの)、木花(きばな)、青島(あおしま)、倉岡(くらおか)の4村、1957年住吉(すみよし)村、1963年生目(いきめ)村を編入。1998年(平成10)中核市に指定された。2006年(平成18)宮崎郡田野町(たのちょう)、佐土原町(さどわらちょう)、東諸県(ひがしもろかた)郡高岡町(たかおかちょう)を、2010年宮崎郡清武町(きよたけちょう)を編入。宮崎の地名は古く、郡名として宮崎が『続日本紀(しょくにほんぎ)』(797年成立)神護景雲(じんごけいうん)2年(768)9月の条にみえる。意味は宮の前で、神武(じんむ)天皇日向(ひゅうが)宮崎宮の所在地といわれるが確証はない。面積643.67平方キロメートル、人口40万1339(2020)。

[横山淳一]

自然

大淀川(おおよどがわ)の中・下流域、清武川の上流から下流域、宮崎平野の中心部を占め、北部、西部は洪積台地を開析した丘陵、南部は鰐塚(わにつか)山(1118メートル)を含む日南(にちなん)山地である。海岸部は砂丘列の発達する一ツ葉海岸(ひとつばかいがん)と、山脚(やまあし)が海に迫る日南海岸である。温暖な気候に恵まれ「太陽と緑の国」の中心地にふさわしく景勝地が多い。

[横山淳一]

歴史

市内には古墳が多く、生目古墳群や丘陵の麓(ふもと)の横穴古墳などが知られる。荘園(しょうえん)時代は宇佐八幡(うさはちまん)宮領宮崎荘や国富(くどみ)荘が宮崎平野に展開した。中世は諸領主の割拠のすえ伊東氏(いとううじ)が勢力を伸ばし、その支配圏はほぼ日向一円に及んだ。のち島津氏(しまづうじ)に敗れたため、日向は一時期島津の支配を受け、さらに豊臣(とよとみ)秀吉の九州出兵以降は諸藩の分割統治となった。江戸時代もほぼ同様で、市域の北部は延岡(のべおか)、佐土原、南部は飫肥(おび)、西部は高鍋(たかなべ)、鹿児島(薩摩(さつま))の各藩の領地があり、海岸沿いに天領というきわめて複雑な所領の配置となった。このため明治以降県庁設置(1873)までは、平野内に際だった中心地はなく、宮崎町の成立も1889年(明治22)と遅れた。初期の市街地は大淀川右岸の赤江、城ヶ崎(じょうがさき)で、鉄道開通前は河港としてにぎわった。その後の発展は速く、行政、商業の中心として、国道10号沿いの橘(たちばな)通りを核として市街地が南北に伸びている。

[横山淳一]

産業

歴史的核もなく、工業も低調な宮崎市であるが、県下第一の都市に成長した理由は行政、商業機能の集積である。今日、都市機能分化が進み、大淀川左岸県庁付近は行政中心地区、橘通りは商業地区、西橘通りは娯楽地区、宮崎駅付近の運輸・通信地区などがあり、大淀川南部、西部の丘陵地には住宅団地が造成されている。また大淀川河畔、青島はホテル・旅館が集中し、観光の占める比重も大きい。郊外は農業地帯で、早期水稲、畜産、ビニルハウスによる施設園芸が盛んである。キュウリカボチャピーマンなどが促成栽培され、大都市地域に出荷されている。ほか、清武川流域などでは、ダイコン栽培や施設園芸が盛ん。北部には宮崎テクノリサーチパークが造成され、南西部は先端技術産業が立地し、工業団地がある。

[横山淳一]

交通

JR日豊本線(にっぽうほんせん)、宮崎空港線、日南線、国道10号、219号、220号、268号、269号、宮崎自動車道、東九州自動車道が通じ、臨海には一ツ葉有料道路が走る。南宮崎には宮崎空港があり、東京、大阪、名古屋(中部)、福岡、沖縄、ソウル、台北(タイペイ)などと結ぶ便がある。また宮崎港は神戸と航路で結ばれている。

[横山淳一]

観光

伝統行事は、宮崎神宮の流鏑馬(やぶさめ)、宮崎神宮大祭(たいさい)(神武(じんむ)さま)などがある。主要な観光地は、市内では宮崎神宮、平和台公園、大淀川畔の橘公園。南部の日南海岸国定公園には、青島、こどものくに、堀切(ほりきり)峠などがある。青島亜熱帯性植物群落(国指定特別天然記念物)と「鬼の洗濯板(せんたくいた)」(「青島の隆起海床と奇形波蝕痕(きけいはしょくこん)」の名称で国指定天然記念物)の特異な景観が美しい。一ツ葉海岸、加江田渓谷(かえだけいこく)、双石山(ぼろいしやま)(国指定天然記念物)も市民の憩いの場として親しまれている。また、内海(うちうみ)のヤッコソウ発生地(国指定特別天然記念物)もある。そのほか、宮崎県総合博物館、宮崎県立美術館、フェニックス自然動物園、宮崎県立芸術劇場など文化施設も多い。

[横山淳一]

『『宮崎市の回顧と展望』(1954・宮崎市)』『『宮崎市史』全2巻(1959~1978・宮崎市)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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