寄・倚・凭・拠・縁・依・因・由(読み)よる

精選版 日本国語大辞典 の解説

よ・る【寄・倚・凭・拠・縁・依・因・由】

〘自ラ五(四)〙
[一] (寄) ある物やある所、また、ある側に近づいて行く。
① ある所、ある物、ある人に向かって近づく。近寄る。
書紀(720)神代下・歌謡「沖つ藻は 辺(へ)には誉戻(ヨレ)ども さ寝床も 与(あた)はぬかもよ 浜つ千鳥よ」
※竹取(9C末‐10C初)「あやしがりてよりて見るに、筒の中光りたり」
② ひと所に集まる。
万葉(8C後)一八・四〇三三「波立てば奈呉浦廻(うらみ)に余流(ヨル)貝の間無き恋にそ年は経にける」
徒然草(1331頃)九「女のはける足駄にて作れる笛には、秋の鹿、必ずよるとぞ言ひ伝へ侍る」
③ 途中でおとずれる。立ち寄る。
※竹取(9C末‐10C初)「わが御家へもより給はずしておはしましたり」
④ 一方へ近づき集まる。また、ある基準から一方へかたよる。
蜻蛉(974頃)中「山風のまづこそふけばこの春の柳のいとはしりへにぞよる」
※枕(10C終)一〇四「淑景舎は、北にすこしよりて、南向きにおはす」
⑤ (倚・凭) もたれかかる。
源氏(1001‐14頃)帚木「脇息によりおはす」
⑥ 相撲で、組んで押し進む。
今昔(1120頃か)二三「成村嗔(いかり)て起ままに、只寄(より)に寄(より)て取合ぬ」
⑦ (年、皺などが)積もり重なる。
平家(13C前)四「入道も年こそよて候へども、子共ひきぐして参り候べし」
⑧ 寄進される。寄付される。
※宇治拾遺(1221頃)八「かかる所に庄などよりぬれば、別当なにくれなどいできて」
⑨ (神霊や物の怪などが)乗り移る。
※今昔(1120頃か)三一「弁幾(いくばく)も无くて病付て、日来を経て遂に失にけり。其の女寄(より)たるにやとぞ」
⑩ その日の相場が始まる。立会が始まる。
浄瑠璃・忠義墳盟約大石(1797)八「早や明過て表には、寄(ヨリ)ます寄(ヨリ)ます、拍子木の音賑わしく、聞へける、アレアレ相場を始める知らせ」
[二] (拠・縁) 気持が、そちらに引きつけられる。
① 気持が、そちらに傾く。
※万葉(8C後)一五・三七五七「吾(あ)が身こそ関山越えてここにあらめ心は妹に与里(ヨリ)にしものを」
② 任せてそれに従う。
※万葉(8C後)一四・三三七七「武蔵野の草は諸(もろ)向きかもかくも君がまにまに吾は余利(ヨリ)にしを」
③ あてにしてそれにたよる。たよってそこに落ち着く。根拠としてとりすがる。
古事記(712)下・歌謡「御諸に 築(つ)くや玉垣 斎(つ)き余し 誰(た)にかも余良(ヨラ)む 神の宮人」
※徒然草(1331頃)二四三「仏のをしへによりてなるなり」
④ 味方になる。ひいきする気持になる。
※枕(10C終)一四四「あなたによりてことさらに負けさせんとしけるを」
[三] (依・因・由) よりどころとなる事柄に基づく。
① 原因する。基づく。
※万葉(8C後)一四・三四六四「人言の繁きに余里(ヨリ)てまを薦の同(おや)じ枕は吾(わ)は枕(ま)かじやも」
学問のすゝめ(1872‐76)〈福沢諭吉〉初「されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとに由て出来るものなり」
② それと限る。定める。
※虎明本狂言・鍋八撥(室町末‐近世初)「御せいさつには、何にはよるまじひ、さうさう罷出て、一のたなについだ者を、末代つけさせられうずるとのお事じゃ」
③ ((三)①から転じた用法) 「によりて」「によって」の形で接続助詞的に用いて、…のために、…からの意を表わす。
※平家(13C前)灌頂「五戒十善の御果報つきさせ給ふによて、今かかる御目を御覧ずるにこそさぶらへ」
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉二「門限は十時じゃによって、少々早う戻ればえいは」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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