小舞(舞踊)(読み)こまい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「小舞(舞踊)」の意味・わかりやすい解説

小舞(舞踊)
こまい

〔1〕狂言の舞の一種。初期歌舞伎(かぶき)の小舞と区別するため「狂言小舞」ともいう。舞の地(じ)である小舞謡(うたい)を伴い、単独で鑑賞できる独立性をもった舞で、1人で舞う。現在、小舞に指定されているのは、大蔵(おおくら)流は大蔵弥太郎(やたろう)編『大蔵流狂言名寄(なよせ)一覧』(1960)によると48番、和泉(いずみ)流は和泉保之(やすゆき)著『改訂小舞謡』(1949)によると71番である。本狂言のなかでは酒宴の場で使われることが多く、狂言尽くしの会などでは紋付袴(はかま)姿で舞われることがある。歌詞の内容によって、(1)庶民的感情を反映した情緒的な曲(『暁(あかつき)の明星(みょうじょう)』『七つに成子(なるこ)』など)、(2)謡曲の一部をとった曲(『海人(あま)』『景清(かげきよ)』など)、(3)祝言用の曲(『福の神』『鶴亀(つるかめ)の舞』など)に大別されるが、軽妙洒脱(しゃだつ)な小舞本来の特色は主として(1)に示されている。狂言の修業は小舞と小舞謡から始め、姿勢と発声の基礎を養う。

〔2〕初期歌舞伎の舞踊の一種。若衆歌舞伎、野郎歌舞伎の時代にとくに流行した。狂言を典拠とする歌舞伎において歌舞の行われる部分をこの様式で演じた。歌舞伎の成立には大和猿楽四座(やまとさるがくよざ)に属さない群小一座の狂言方が参加しており、初めは狂言小舞に近かったが、しだいに歌舞伎舞踊としての芸態を確立したと思われる。右近源左衛門(うこんげんざえもん)、小舞庄左衛門(しょうざえもん)らは小舞の名人として知られる。多くの小舞のうちから、若衆歌舞伎時代に、諸書によって異同はあるが、「小舞十六番」が制定され、後年まで舞の基礎技術を示すものとして舞踊の家柄で重視された。なお、この歌舞伎の小舞を取り入れて狂言小舞に仕立てた曲もあると推考されている。

[小林 責]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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