尽・竭・殫(読み)つくす

精選版 日本国語大辞典 「尽・竭・殫」の意味・読み・例文・類語

つく・す【尽・竭・殫】

〘他サ五(四)〙 (「つきる(尽)」の他動詞形)
① つきるようにする。
(イ) なくする。終わりにする。
万葉(8C後)一一・二四四二「大土は採りつくすとも世の中の尽(つくし)得ぬ物は恋にしありけり」
※地蔵十輪経元慶七年点(883)四「我等が命を尽(ツクサ)むと欲(おも)ひてするにあらずあらむや」
(ロ) あるかぎり出す。全部出しきる。つきるまでする。
※万葉(8C後)四・六九二「うはへなき妹にもあるかもかくばかり人の心を尽(つくさ)く思へば」
源氏(1001‐14頃)桐壺鈴虫の声のかぎりをつくしてもながき夜あかずふるなみだ哉」
② その極まで達する。できるかぎりする。きわめる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)五「永く苦海を竭(ツクシ)て罪を消除し」
※春窓綺話(1884)〈高田早苗・坪内逍遙・天野為之訳〉一「凞々たる歓楽を罄(ツ)くさんが為めのみ」
③ (動詞の連用形に付いて) 十分にする、すっかりする、余すところなくするの意を添える。「言いつくす」「書きつくす」など。
日葡辞書(1603‐04)「Yomi(ヨミ) tçucusu(ツクス)。モノヲ cuitçucusu(クイツクス)
※日本読本(1887)〈新保磐次〉五「マッチの焔を石油の中に落したるが、忽満室の火となり、遂にその町を類焼し尽しぬ」
④ (「力を尽くす」などを略した表現で) 他のもののために働く。人のために力を出す。
※真善美日本人(1891)〈三宅雪嶺〉国民論派〈陸実〉「個人が国家に対して竭すべきの義務あるが如く」
⑤ (「意を尽くす」などを略した表現で) 十分に表現する。くわしく述べる。
浄瑠璃傾城反魂香(1708頃)中「口でさへつくされぬ筆には中々まはらぬと」
⑥ 心をよせる。熱をあげる。
※浮世草子・傾城歌三味線(1732)二「地の女中にはしゃれたる奥様、旦那様のつくさるる相肩の太夫がな、見にござるであらふと」
⑦ (「あんだらつくす」「阿呆(あほう)をつくす」「馬鹿をつくす」などの略から) 「言う」「する」の意の俗語となる。
(イ) 「言う」をののしっていう語。ぬかす。ほざく。〔評判記・色道大鏡(1678)〕
※洒落本・色深睡夢(1826)下「大(おほ)ふうな事、つくしやがって」
(ロ) 「する」をののしっていう語。しやがる。しくさる。
※浄瑠璃・心中二枚絵草紙(1706頃)上「起請をとりかはすからは偽りは申さないと存じ、つくす程にける程に」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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