岩手山(読み)いわてやま

精選版 日本国語大辞典 「岩手山」の意味・読み・例文・類語

いわて‐やま いはて‥【岩手山】

同音の繰り返しで、「いはで」にかかる。
古今六帖(976‐987頃)二「いはて山いはでながらの身のはてはおもひしこととたれかつげまし」

いわて‐さん いはて‥【岩手山】

岩手県盛岡市北西方にある円錐火山。山麓の原野は放牧が盛ん。十和田八幡平国立公園の一部。標高二〇三八メートル。南部富士岩手富士

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デジタル大辞泉 「岩手山」の意味・読み・例文・類語

いわて‐さん〔いはて‐〕【岩手山】

盛岡市の北西にある火山。標高2038メートル。北麓の金沢清水は名水で知られる。南部富士。岩手富士。巌鷲山がんじゅさん

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日本歴史地名大系 「岩手山」の解説

岩手山
いわてさん

県の北西部に位置し、山頂付近は岩手郡滝沢たきざわ村・雫石しずくいし町・松尾まつお村・西根にしね町にまたがる。早池峰はやちね山と姫神ひめかみ山とともに岩手三山をなす。那須火山帯に属する複式成層火山の休火山。標高二〇三九メートルで県内最高峰。古期火山の西岩手山火口の東壁部を、新しい東岩手山が覆っている。西岩手山は頂上に東西三キロ・南北二キロの大火口をもち、火口内に御釜おかま湖・御苗代おなわしろ湖があり、外輪山北側を屏風びようぶ尾根、南側を鬼ヶ城おにがじようとよぶ。東岩手山には御鉢おはちとよばれる噴火口(直径約七〇〇メートル)内に、第二次火口の御室おむろと中央火口丘の妙高みようこう山がある。西岩手山の西方には黒倉くろくら(一五七〇メートル)姥倉うばくら(一五一七・三メートル)犬倉いぬくら(一四〇八メートル)が連なり、秋田県境の山並へ続く一帯は雫石町の網張あみはり温泉・滝ノ上たきのうえ温泉、松尾村松川まつかわ温泉などを含め、十和田八幡平とわだはちまんたい国立公園に指定されている。岩鷲がんじゆ山ともいわれ、裾野の長い秀麗な山容から、岩手富士・南部富士・南部片富士などとも称される。また霧山きりやま嶽ともいわれ、前九年の役の際、源義家が岩手山の観音に祈願したところ、霧が晴れて山頂が姿を現したという(明治七年「岩手山神社考証書」小原文書)。「奥々風土記」には「岩手郡なる諸山に秀たる高山なれば、即郡ノ名を負て、岩手山とはいふ也」とある。古くから歌に詠まれることが多く、「千載集」に左京大夫顕輔の「思へどもいはでの山に年をへてくちやはてなん谷の埋木」や顕昭法師の「人しれぬ涙の川のみなかみやいはでの山の谷のした水」、「続古今集」に皇后宮内侍の「しられじなたえずこころにかかるともいはでのやまのみねのしらくも」などが載る。

正保国絵図に岩鷲山とみえるが、この名がいつから使用されたかは未詳。むしろ史料上は信仰の対象となった岩鷲山大権現(御殿と称する山頂本社および現在の岩手郡滝沢村巌手山神社など)の名が中世末頃からみえるが、岩手山自体が神体であったのは明らかであろう。岩鷲の由来については、前掲考証書によれば、長治年中(一一〇四―〇六)頃に「山上ノ岩ニ鷲屡現レテ、其レヨリ岩鷲山ト称シ来レリ」とみえる。天明八年(一七八八)には菅江真澄が「嵩に鷲のすがたしたる岩の在れば岩鷲山かんじゆさんととなへ、おいはわしといふべきを、もはら語路あしく、はぶきていへり。いはては岩しゆの文字なれば、岩鷲かんじゆのこゑに、いまし世の誰かいひたがひけん」と記している(岩手の山)。なお三光院(のちの自光坊)のものとされる永禄六年(一五六三)の棟札(一方井家蔵)に「岩鷲山宝殿」とあり、「雑書」寛永二一年(一六四四)五月三日条には、打続く日照りのため「自光坊門徒之山伏数人誘引、岩鷲山麓て為法雨乞」と記される。

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改訂新版 世界大百科事典 「岩手山」の意味・わかりやすい解説

岩手山 (いわてさん)

岩手県西部,盛岡市の西に位置する円錐形の火山。標高2038m。岩手県内の最高峰で南部富士といわれ,東・北・南側のすそ野の発達がよく,その末端はそれぞれ松川,北上川,雫石(しずくいし)川にまで至るが,西側は複雑な山容を示すことから南部の片富士の名もある。山体は噴出時代の異なる東西両岩手山からなり,古い西岩手山の東側を,新しい東岩手山が覆っている。西岩手山は頂上に東西3km,南北2kmの大火口をもち,その外輪山の北壁を屛風岳,南壁を鬼ヶ城と呼び,火口内には御釜,御苗代(みなわしろ)の両湖があり,濃い青藍色の水をたたえている。一方,東岩手山も頂部火口内に中央火口丘の妙高山をもっている。火山体の最高部は東岩手山で,山体は主として複輝石安山岩の溶岩で構成されている。岩手山の頂上付近は新旧火山の相違や高山植物の種類,その発生状態などが区域によって異なることがよく観察され,岩手山高山植物帯として天然記念物に指定されている。

 1719年(享保4)には岩手山の北東斜面,標高1200m付近の中腹で噴火が起こり,ここから流出した溶岩流は北東麓の三森山まで約3.5km流下し,現在は焼走(やけばし)り溶岩流として特別天然記念物に指定されている。岩手山は十和田八幡平国立公園の南部を占め,網張,滝ノ上,松川などの温泉に加え,多数の湖沼,湿原,渓谷などがあるため年々観光客が増加している。近年,山麓では東北自動車道(1977)や東北新幹線(1982)の開通に刺激されて,網張温泉の岩手山麓国民休暇村や各種のリゾート施設の建設が進められている。また,北麓の松川地区(松川温泉)や南西麓の葛根田(かつこんだ)(雫石町滝ノ上)地区では地熱開発も行われ,松川地区では1966年,葛根田地区では78年から地熱発電所が操業している。一方,農業では南麓に1891年開設の小岩井農場があり,北・東・南麓では第2次世界大戦後から国営による大規模な開拓が行われ,酪農と開田,開畑が進められた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「岩手山」の意味・わかりやすい解説

岩手山
いわてさん

岩手県の北西にある火山活火山で,常時観測火山。別称巌鷲山(がんじゅさん),南部富士,岩手富士,南部片富士。標高 2038m。岩手県を代表する山で,山域は八幡平市滝沢市雫石町の 3市町に及ぶ。東西に連なって噴出した成層火山十和田八幡平国立公園の最高峰で,那須火山帯に属し,山頂は東岩手山と西岩手山の二つに分かれる。東岩手山は二重式火山(→複式火山)で,おもに輝石安山岩からなり,頂上に直径約 1kmの大噴火口をもつ。火口壁の北縁に最高峰の薬師岳が,火口原には中央火口丘の妙高山がある。御室火口からはいまも水蒸気を噴出。北東斜面の中腹には享保17(1732)年に噴出した長さ約 3kmに及ぶ焼走り熔岩流(国指定特別天然記念物)がある。西岩手山は三重式火山で,山体は輝石安山岩,橄欖岩の溶岩と砕屑岩(さいせつがん)からなる。頂上に東西 3km,南北 2kmの大噴火口があり,その外輪山の北壁を屏風尾根,南壁を鬼ヶ城と呼ぶ。中央火口丘の頂上には直径約 450mの噴火口,御苗代湖,御釜湖がある。いずれも濃い青藍色の水をたたえている。8合目にはかつて盛岡地方気象台の岩手山測候所(→測候所)があったが,1973年に閉鎖された。東から柳沢口,平笠口,南から網張温泉口,北から七滝口,松川温泉口などの登山コースがある。不動平火口原から頂上にかけて,新旧火山の相違や高山植物の種類,発生状態が区域により異なることが観察され,岩手山高山植物帯として国の天然記念物に指定されている。

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百科事典マイペディア 「岩手山」の意味・わかりやすい解説

岩手山【いわてさん】

岩手県盛岡市北西方にある安山岩からなる三重式成層火山。標高2038m。十和田八幡平(はちまんたい)国立公園の中では最高峰。南部富士,片富士とも呼ばれる。鬼ヶ城,黒倉山など南面する外輪山に囲まれた火口原に火口湖の御苗代湖,御釜湖があり,高山植物(天然記念物)が群生。山体東部は新火山体の東岩手山で,頂部に火口と火口丘をもち,広い裾野(すその)上に1719年噴出した焼走りと呼ぶ溶岩流(特別天然記念物)がある。《千載和歌集》など古くから歌に詠まれるが,菅江真澄などによれば岩鷲(がんじゅ)山とも称された。山麓に小岩井農場松川温泉,網張温泉(岩手山麓国民休暇村)がある。現在でも時折火山性微動を発生させるなど活動が継続しており,気象庁が常時観測する活火山となっている。
→関連項目奥羽山脈雫石[町]滝沢[市]西根[町]日本百名山

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「岩手山」の意味・わかりやすい解説

岩手山
いわてさん

岩手県中西部、盛岡市の北部にそびえる山。標高2038メートル。コニーデ式火山で、南部富士、岩手富士ともいう。複合火山のため眺める位置によって形が変わり、南部片富士ともよばれる。山岳信仰の対象であった山で、古くは巌鷲山(がんじゅさん)ともよばれた。山体は二つの火山からなり、古い西火山の火口は東西約3キロメートル、南北約2キロメートルの紡錘形をなし、屏風(びょうぶ)岳、鬼ヶ城の外輪山と中央火口丘がある。東岩手山は西岩手山の東斜面に形成された新しい火山で、噴気孔がみられ活火山の様相を呈している。1719年(享保4)の噴火は特徴的で、北東斜面から多量の「焼走り熔岩流(やけはしりようがんりゅう)」(特別天然記念物)を流出した。新旧火山の相違や高山植物の種類、群落の移り変わりが観察され、「岩手山高山植物帯」として国の天然記念物に指定されている。十和田八幡平(はちまんたい)国立公園の南部を占め、湿原、湖沼、渓谷、温泉など、主として火山性景観が展開。岩手山北西麓(ろく)には松川温泉、松川地熱発電所(2万キロワット)があり、南西麓には網張(あみはり)、滝ノ上(たきのうえ)温泉や葛根田(かっこんだ)地熱発電所(8万キロワット)がある。また、緩やかな山麓斜面は第二次世界大戦後は開拓入植により牧野が広がり、一本木には自衛隊演習地もある。登山口は、信仰登山のため開かれた柳沢口、西岩手山の複雑な景観を展開する網張温泉口などがある。

[川本忠平]

『『岩手山 第一部』(1973・岩手放送)』


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事典 日本の地域遺産 「岩手山」の解説

岩手山

(岩手県)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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事典・日本の観光資源 「岩手山」の解説

岩手山

(岩手県)
日本百名山」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の岩手山の言及

【岩手[県]】より

…藤原文化を受けつぐ歴史の町平泉や花巻温泉郷などは,東北観光ルートの基地でもある。(2)奥羽山脈東麓地帯 北部には七時雨(ななしぐれ)山に続く高原があり,八幡平,岩手山,駒ヶ岳など1500m前後の山々が集まって十和田八幡平国立公園の雄大な自然美を作り出している。その中でも岩手山(2041m)は南部富士ともいわれる円錐状火山で,付近に多くの温泉が湧出し,松川地熱発電所(2万kW),葛根田(かつこんだ)地熱発電所(5万kW)などもあり,北東北(きたとうほく)の観光の中心地となっている。…

※「岩手山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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