川口(市)(読み)かわぐち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「川口(市)」の意味・わかりやすい解説

川口(市)
かわぐち

埼玉県南東部にある市。南部は東京都に接する。1933年(昭和8)川口町と青木、横曽根(よこそね)、南平柳(みなみひらやなぎ)の3村が合併して市制施行。1940年鳩ヶ谷(はとがや)町と新郷(しんごう)、芝、神根(かみね)の3村を編入したが、1950年(昭和25)鳩ヶ谷町(1967年市制施行)が分離、1956年安行(あんぎょう)村、1962年美園(みその)村の大部分を編入。2001年(平成13)特例市に指定される。2011年鳩ヶ谷市を編入。2018年、中核市に移行。JR京浜東北線・武蔵野(むさしの)線、地下鉄の埼玉高速鉄道線が通り、国道122号が走る。首都高速道路川口線が延び、東北自動車道と東京外環自動車道が川口ジャンクションで交差する。市の西部、南部は荒川左岸の沖積低地であるが、東部は大宮台地が広がる。

 江戸時代は日光御成街道(にっこうおなりかいどう)の宿場町であり、市場町であると同時に、鋳物(いもの)、釣り竿(ざお)、植木織物、みそ、紙漉(す)きなどの諸産業が盛んであった。このうち鋳物は、明治以降もますます発展し、全国的に有名になった。近年は機械部品の鋳物が中心で、各種の需要に応じている。しかし、鋳物工場は小規模工場が多く、独特の煙突をもつ溶銑炉で、「キューポラのある街」とよばれていたが、しだいにその数を減じている。最近では、その他の機械器具、車両、化学製品などの重化学工業を中心とした諸産業が盛んで、2001年には、従業者4人以上の工業事業所数は2187、製造品出荷額等は6549億円で、県第4位である。

 北東部の安行地区は、大宮台地から綾瀬(あやせ)川の低地に及び、江戸時代から植木、苗木の産地として知られる地域で、埼玉県花と緑の振興センターもある。この植木、苗木地域はさらに、さいたま市の浦和、大宮方面まで広がり、一部は県立安行武南(ぶなん)自然公園に指定されている。市内には県指定文化財や史跡が多い。建物では鶴ヶ丸八幡(はちまん)神社本殿、西福寺三重塔などがある。史跡では、新郷(しんごう)貝塚、小谷場(こやば)貝塚があり、長徳寺のビャクシンは県の天然記念物に指定されている。市立科学館や市立グリーンセンター(植物公園)、総合文化センター(リリア)もある。そのほか、公営競技の川口オートレース場がある。面積61.95平方キロメートル、人口59万4274(2020)。

[中山正民]

『『川口市史』全10巻(1978~1988・川口市)』


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