工・匠・巧(読み)たくみ

精選版 日本国語大辞典 「工・匠・巧」の意味・読み・例文・類語

たくみ【工・匠・巧】

(動詞「たくむ(工)」の連用形の名詞化)
[1] 〘名〙
[一] 人についていう。
① 手や道具を用いて物を作り出すことを業とする人。細工師。工匠。職人。「こだくみ(木工)」「かなだくみ(金工)」など。
書紀(720)神代上(兼方本訓)「即ち、石凝姥(いしこりとめ)を以て冶工(タクミ)と為て、天香山の金(かね)を採て以て日矛(ひほこ)を作(つく)らしむ」
② 特に木材で物を作る職人。こだくみ。大工(だいく)
※書紀(720)雄略六年二月・歌謡「我が命も 長くもがと 言ひし倶彌(タクミ)はや
※大鏡(12C前)二「工(たくみ)ども裏板(うらいた)どもをいとうるはしくかなかきて」
[二] 事柄についていう。
① もっぱら行なう仕事。
散木奇歌集(1128頃)恋上「明くれは物思ふ事をたくみにてわりなく胸を知る人ぞなき」
② いろいろ思いめぐらして、見つけ出したよい方法。工夫。趣向。手段。
無名抄(1211頃)「哥は作りたてたる風情、たくみはゆゆしけれど」
③ はかりごと。たくらみ。計略策謀
※平仮名古活字三巻本宝物集(1179頃)下「さては我をすかしやりてまをとこにころさせんたくみなりとて」
浄瑠璃仮名手本忠臣蔵(1748)五「石碑になぞらへ大星の工(タクミ)をよそに知らせしは」
④ 美しくしつらうこと。また、美しくしつらえるもの。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)九「均綵の濃淡(ちょうたむ)は敬君も其の巧(タクミ)に逾(こ)ゆること能はず」
⑤ 芸術や芸術的雰囲気(ふんいき)をさしていう。
※落梅集(1901)〈島崎藤村幻境「消えはてにけり吾恋は 芸術(タクミ)諸共(もろとも)消えにけり」
[2] 〘形動〙 (工・巧) てぎわよくすぐれているさま。できばえのすぐれているさま。上手(じょうず)であるさま。巧妙。器用。また、現代ではずるがしこい意をこめていう場合もある。
※書紀(720)神代上(兼方本訓)「天鈿女(あまのうすめの)命、〈略〉天石窟戸(あまのいはやと)の前に立(た)たして、巧(タクミ)に作俳優(わさをき)す」
古今(905‐914)仮名序「ふんやのやすひでは、ことばたくみにて、そのさま身におはず」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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