精選版 日本国語大辞典 「差・指・尺・刺・挿・緡」の意味・読み・例文・類語
さし【差・指・尺・刺・挿・緡】
[1] 〘名〙 (動詞「さす(差)」の連用形の名詞化)
① (差・尺) 長短をはかる道具。ものさし。
※雑俳・川柳評万句合‐明和二(1765)義七「もも引や笑てさしをあてて見る」
② さし通すもの。
※俳諧・信徳十百韻(1675)「古法眼したふなかれの末の秋 さしのさきより現米何俵」
(ロ) (緡) 穴あき銭を刺し通してまとめておく細い紐。円形方孔の銭貨の保存、または運搬などのために使われるもので、わら、または麻縄製のもので一〇〇文を一本にさすのが通例である。ぜにざし。転じて、百文の異称。
※勝山記‐享祿二年(1529)「大原にては三升十文さしに売買申候」
(ハ) (緡) 一〇〇本の紙捩(こより)、または細縄を束ねて根もとをくくったもの。お百度参りや川垢離(かわごり)の際などのときに唱える名号(みょうごう)の数取りに用いた。百度ざし。
※雑俳・川柳評万句合‐明和元(1764)義五「鬼母神壱人うんではさしをなげ」
③ 二人ですること。
※葉花星宿(1972)〈松本清張〉五「真実の叱責であったら、人を遠ざけ、一対一(サシ)で云えばよい」
(ロ) 二人で荷などをかつぐこと。さしにない。
※雑俳・川柳評万句合‐安永五(1776)松二「つりがねをさしでかつぐと雨がふり」
(ハ) カルタ賭博や花札を二人ですることをいう。〔模範新語通語大辞典(1919)〕
④ (「さしあい(差合)」の略) 支障があり具合の悪いこと。さしさわり。
※雑俳・雲鼓評万句合‐元文二(1737)「さしの有る其夜はちゃんと裏から来」
⑤ 能、舞楽で用いる語。
※五音(1434頃)下「吉野山 元雅曲 指 いにしへのかしこき人のあそびけん」
(ロ) 舞楽、能楽などの舞の型の一つ。手をさし出すように前へ水平にあげる。
⑥ 密告者。
※歌舞伎・夢物語盧生容画(1886)六幕「手前が指人(サシ)だといふことは、委しく聞いて置いたのだ」
⑧ 相撲のさし手。
⑨ 「さしみ(刺身)」の略。
⑪ 詐欺賭博をいう、盗人仲間などの隠語。
[2] 〘接頭〙 (動詞「さす(差)」の連用形から転じたもの) 動詞の上に付いて、その意味を強め、あるいは語調を整える。「さす」の原義を残して用いるものもある。「さし出す」「さし置く」「さし据う」「さし曇る」など。
[3] 〘接尾〙 舞の曲数を数えるのに用いる。
※謡曲・自然居士(1423頃)「ひとさし舞うておん見せあれと申され候」
[4] 〘語素〙
① 物を差し入れること。また、その器具。「状差」「針差」など。
② 液体を注ぎ入れること。また、その物。「水さし」「油さし」など。
③ 「さす」行為を職業として行なう人。さす人。「沓(靴)さし」「畳さし」「鳥さし」「将棋さし」など。
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