市乾鹿文/市鹿文(読み)いちふかや/いちかや

朝日日本歴史人物事典 「市乾鹿文/市鹿文」の解説

市乾鹿文/市鹿文

日本書紀』に見える,熊襲の首長八十梟帥(クマソタケルとも)のふたりの娘。熊襲を征討しようとした景行天皇は,多くの兵士動員人民の負担を大きくするので,軍を動かさずにこれを征討するために一計を案じ,ヤソタケルの娘のイチフカヤとイチカヤを自分のもとへ召し上げて,姉のイチフカヤを寵愛した。すると,イチフカヤは兵士を伴って家に帰って父を酒で酔わせたうえ,父の弓の弦を切った。このときに,彼女に随行していた兵士が,寝込んだ父を殺害した。天皇は,この不孝を憎んで彼女を殺し,妹のイチカヤを肥国の国造に与えた,と伝えられる。天皇が人民の負担を避けようとしたというのは天皇の徳を強調するための話だろうし,イチフカヤの不孝を憎んだというのは儒教思想による潤色だろう。

(佐佐木隆)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

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