年・歳(読み)とし

精選版 日本国語大辞典 「年・歳」の意味・読み・例文・類語

とし【年・歳】

〘名〙
① 時の単位。現行の太陽暦グレゴリオ暦)では、地球が太陽のまわりを一周する時間(平均三六五・二四二二日)を一年とし、平年は三六五日、四年ごとに閏年(うるうどし)を設け三六六日として補正する。日本では明治六年(一八七三)太陽暦に改められるまで、中国伝来の太陰暦を用いた。太陰暦では、新月から次の新月まで、または満月から次の満月までの朔望月(さくぼうげつ)(=平均二九・五三〇五九日)を基準とし、一二朔望月(平均三五四・三六七〇日)を一年とするため、大の月(三〇日)と小の月(二九日)とを適当に組み合わせ、かつ一九年間に七回の閏月を設けて暦と季節とのずれを補正した。したがって暦の上での一年は日数が一定でない。暦年。
(イ) 一年間を単位とする歳月。一二か月。
古事記(712)中・歌謡「あらたまの 登斯(トシ)が来(き)(ふ)れば あらたまの 月は来経(へ)ゆく」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)旅立「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」
(ロ) 年次。その年。当年
万葉(8C後)二・一八〇「み立たしの島をも家と住む鳥も荒びな行きそ年(とし)かはるまで」
源氏(1001‐14頃)桐壺「この御子三つになり給年、御袴着のこと〈略〉いみじうせさせ給ふ」
(ハ) 今までに経過した年数。年代。時世
※源氏(1001‐14頃)若紫「としのかさなるに添へて、御心の隔てもまさるを、いとくるしくおもはすに」
時候の移り変わり。季節の区分。節季、特に年末。→とし(年)遅し
(イ) 生まれてからの年数。年齢。齢(よわい)
※古事記(712)中「凡そ此の神倭伊波礼毘古天皇の御年(とし)、壱佰参拾漆歳」
※土左(935頃)承平五年一月二二日「としここのつばかりなる男(を)わらは、としよりはをさなくぞある」
(ロ) 特に、老いの感じられる年齢。老齢。また、より年取った年齢。
※風と死者(1969)〈加賀乙彦〉「いや体がガタガタだ。年だね」
④ (上代農事に由来する語で、穀物が一回実る期間が一年に相当するところから) 五穀、特に稲。また、その耕作、収穫、作柄など。
※万葉(8C後)一八・四一二四「わが欲りし雨は降り来ぬかくしあらば言挙げせずとも登思(トシ)は栄えむ」
※拾遺(1005‐07頃か)神楽歌・六一四「年もよしこかひも得たりおほくにの里たのもしくおもほゆる哉〈平兼盛〉」
⑤ 数詞の四をいう関西の木綿商の符丁。
[補注]助数詞として用いられる時は「とせ」と音変化する。

とせ【年・歳】

〘接尾〙 数詞に付いて、年数をかぞえるのに用いる。
※万葉(8C後)五・八八〇「天離る鄙(ひな)に五(いつ)等世(トセ)住まひつつ都のてぶり忘らえにけり」
※伊勢物語(10C前)六三「百(もも)とせに一とせ足らぬつくも髪我を恋ふらし面影に見ゆ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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