廻・巡・回(読み)めぐらす

精選版 日本国語大辞典 「廻・巡・回」の意味・読み・例文・類語

めぐら・す【廻・巡・回】

〘他サ五(四)〙 (「めぐる」の他動詞形。「めぐらかす」とも)
① かこむ。包囲する。
※守護国界主陀羅尼経平安中期点(1000頃)七「種種の真珠瓔珞を周(メクラシ)(たれ)
源氏(1001‐14頃)夕霧「ゆゆしげにひきへだてめぐらしたる、儀式の方は隠して」
② くるりとまわす。回転させる。旋回させる。
※聖語蔵本成実論天長五年点(828)一六「杖を以て輪を転(メグラす)とき」
平家(13C前)一一「車は輪をめぐらす事あたはず」
③ 順ぐりに回文あるいは、口頭でふれまわして知らせる。
※観智院本三宝絵(984)下「殿ばら宮ばらは召次雑色廻し催す」
※源氏(1001‐14頃)松風「堂の飾り、仏の御具などめぐらしおほせらる」
順路を経てものを運ぶ。移動させる。
書紀(720)仁徳六二年五月(前田本訓)「南の海より運(メクラシ)て、難波津に将(ゐ)て来りて、御船に充てつ」
※大慈恩寺三蔵法師伝院政期点(1080‐1110頃)九「親ら聖筆を紆(メクラシテ)、大慈恩寺の為に製せられたる碑文已に成れり」
⑤ (「思い、考え、工夫をめぐらす」の形で) あれこれと考える。思案する。思惟を働かす。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)六「想を運(めグラシ)て虔恭して、吉祥の事を為るべし」
玉葉‐承安三年(1173)六月八日「山座主、廻秘計山上事
⑥ (「はらわたをめぐらす」の形で) ひどく腹を立てる。または、悲しむ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
⑦ (「時、時刻をめぐらす」の形で) 時を経過させる。
※平家(13C前)二「時刻をめぐらさず西光父子が命をめしとり給へやと、をめきさけんで」
事柄をつかさどって推移させる。
談義本・風流志道軒伝(1763)一「天下を運(メグラ)す掌の内に、お花とやらをめぐらする、言語同断の学者も有よし」

めぐら‐・う ‥ふ【廻・巡・回】

〘自ハ四〙 (動詞「めぐる(廻)」に、反復継続を表わす助動詞「ふ」の付いてできた語)
① ためらってさまよう。躊躇してうろつく。
※書紀(720)皇極四年六月(岩崎本訓)「中大兄、子麻呂等の、入鹿が威(いきほひ)に畏りて、便旋(メクラヒ)て進まざるを見て曰はく」
② 巡回し続ける。まわり歩く。
※浜松中納言(11C中)三「ばむをもて夜に三四人づつとのゐたしかにめぐらゐてさぶらはせ」
俗世に生きつづける。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「まどひつかうまつるかひありて、けふ今までめぐらひ給ふは、いかにうれしきことなり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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