精選版 日本国語大辞典 「引・退」の意味・読み・例文・類語
ひ・ける【引・退】
〘自カ下一〙 ひ・く 〘自カ下二〙
① 引かれる。
② 差し引かれる。(経費などが)かかる。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉秋「盛に為れば為るほど広告料に引けて、世間からは資本要らずの詐欺同様に言はれながら」
④ 見劣りする。けちだ。しみったれている。
※評判記・名女情比(1681)五「せんどはいかふひけた脇差にて、笑はれさんした」
⑤ 衣服、布などが破れる。ほころびる。すり切れる。
※談義本・当世花街談義(1754)一「木綿布子に肩の、ひけたる戻子(もじ)の十徳」
⑦ 商品がよく売れる。
※日葡辞書(1603‐04)「Vrimonoga(ウリモノガ) fiquru(ヒクル)」
⑧ (ふつう「退」と書く) 終業時刻となる。仕事が終わって退出する。
※雑俳・柳多留‐一三(1778)「引ケる迄ほれ残されるつらい事」
(ハ) その日の相場が終わる。
※金(1926)〈宮嶋資夫〉二〇「今日もいつもの通り場が引(ヒ)けたら、早く帰って」
⑨ 後退する。ひっこむ。
※三体詩素隠抄(1622)三「貧にして、肉が、ひけたれば、ひきかるべき骨は、高くあらわれ」
ひけ【引・退】
〘名〙 (動詞「ひける(引)」の連用形の名詞化)
※三河物語(1626頃)三「上様之御あたりを一寸はなるる事は、何たる武辺をしても、第一之ひけなるに」
※室町殿日記(1602頃)七「重而も有事なれば同心共よくよく下知し給へ。かれらがひけは某がひけ也」
③ (ふつう「退」と書く) その日の勤務・課業が終わること。また、その時刻。終業。退勤。放課。
※怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉二一「いつもより少々見世を早くひけにして寝かしておくれ」
④ 「ひけよつ(引四)」の略。
※洒落本・蕩子筌枉解(1770)秋夜寄丘二十二員外「もふひけもうてばよもや御はあるまいと」
⑤ ある金額からいくらかを差し引くこと。
(イ) 値が下がること。また、割り引くこと。
※談義本・当風辻談義(1753)三「あたら小袖にきわづきがすれば、払ふ時に格別ひけがたつ」
(ロ) 上前(うわまえ)をはねること。
※洒落本・古契三娼(1787)「男芸者は明朝座料をとりにまはりやす、引ケを取られるもんだから、銭で受取るのさ」
⑥ 取引市場で、平日の前場・後場の売買取引を終わること。また、その最終の取引。
※朝野新聞‐明治七年(1874)九月二四日「十二月限七円八銭より〈略〉七銭六銭七銭引」
⑦ 製織上の欠点のこと。緯(よこいと)張力のふぞろいによる緯(よこ)引け、経(たていと)張力のふぞろいによる経(たて)引けなどがある。光の反射が異なり光沢がちがう。
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