引下・引提(読み)ひきさげる

精選版 日本国語大辞典 「引下・引提」の意味・読み・例文・類語

ひき‐さ・げる【引下・引提】

〘他ガ下一〙 ひきさ・ぐ 〘他ガ下二〙
① 手にさげて持つ。たずさえる。ひっさげる。
※大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「衡を提(ヒキサケ)て物に範(のりと)りたり」
蜻蛉(974頃)中「あはれ、今様は、女もすずひきさげ、経ひきさげぬなしとききしとき」
② 家族や部下をひきつれる。ともなう。つれる。
※蜻蛉(974頃)下「今はかぎりに思ふ身をばさるものにて、かかるところにこれをさへひきさげてあるを、いといみじと思へども」
③ その場所を離れさせる。退かせる。さがらせる。
※浮世草子・好色五人女(1686)三「年久しく御所方にみやづかひせしが〈略〉身をひきさげて」
④ さげて低くする。ひきおろす。
富家語(1151‐61)「可然人下自車時は於車中先表袴引さけ表衣襴引ならしなとして下る故実也」
⑤ 身分、地位、評価などを低くする。
※現代経済を考える(1973)〈伊東光晴〉I「こうした国際通貨の調整は、〈略〉国の相対的地位を大きく引下げた」
物価、水準などを低くする。
滑稽本・古朽木(1780)二「御初夢類品々 二日過候得ば直段格別に引下げ差上申候」
⑦ とりさげる。
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「それほど困るなら引退(ヒキサ)げるけれど」

ひっ‐さ・げる【引下・引提】

〘他ガ下一〙 ひっさ・ぐ 〘他ガ下二〙
① 大きな物、目立つ物などを手にさげて持つ。たずさえる。携帯する。
※高野本平家(13C前)三「漢高祖は三尺の剣を提(ヒッサゲ)天下を治しかども」
② かかげる。提示する。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一一「この編を終るに臨み、要領を提(ヒッサ)ぐべし」
③ ひきつれる。ともなう。つれる。
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉八「佳人を挈(ヒッサ)げて逍遙するも」
④ 事を行なうのに、力になるものとしてかかげる。また、新しいものをはなばなしくかかげる。
※前期自然主義文学(1949)〈瀬沼茂樹〉二「ゾラが〈略〉『ルウゴン・マッカアル叢書』をひっさげて、登場していった」
⑤ (「体を━」などの形で) 無理を押して事に当たる。ひきずる。
※ふらんす物語(1909)〈永井荷風巴里のわかれ「病躯を提(ヒッサ)げながら〈略〉今日まで巴里に足を駐めて居たのであるが」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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