弱音器(読み)じゃくおんき

精選版 日本国語大辞典 「弱音器」の意味・読み・例文・類語

じゃくおん‐き【弱音器】

〘名〙 音を弱め音色を変えるために楽器に取り付ける装置弦楽器管楽器打楽器などの各楽器に特有の形質のものがある。ミュート。〔モダン辞典(1930)〕

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デジタル大辞泉 「弱音器」の意味・読み・例文・類語

じゃくおん‐き【弱音器】

楽器の音量を小さくしたり音色を変化させたりするための器具。主にバイオリンなどの弦楽器やトランペットなどの金管楽器に用いられる。ミュート。

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改訂新版 世界大百科事典 「弱音器」の意味・わかりやすい解説

弱音器 (じゃくおんき)

楽器の音量を弱め音色を変えるための器具または装置。ミュートmute,ソルディーノsordino(イタリア語)ともいう。楽器に対して,随時簡単に着脱できるものが多い。弦楽器ではバイオリン族弱音器が代表的で,櫛形小片を駒にはさむ。弦から駒を経て胴に伝わる振動が抑制されて,こもった柔らかな音質に変わる。金管楽器にも徳利状,椀状などの弱音器があり,朝顔状開口に差し込んで用いる。曇った音になるもの,鋭い音になるものなど,種類により効果は一様でない。打楽器類には,普遍性のある弱音器は作られていないが,必要に応じて振動膜面にフェルト等をふれさせるとか,柔らかい桴頭ばちがしら)を用いるとか,多様な工夫をこらす。ピアノの左ペダルとか,ハープシコードのリュート・ストップという機構なども,それぞれ弱音器に近い性格をもつといえよう。また近年,左右のペダルの中央に,騒音対策用の弱音ペダルを配したピアノもある(弦とハンマーの間にフェルトをはさむ)。ちなみに三味線の練習時の音量をおさえるために,忍駒(しのびごま)という特殊な駒を用いることがある。練習用の無音バイオリンも文献に記されている。
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百科事典マイペディア 「弱音器」の意味・わかりやすい解説

弱音器【じゃくおんき】

楽器の音量を小さくし,音色を変えるために楽器に付ける道具。ミュートmute(英語),ソルディーノ(イタリア語)ともいう。弦楽器では木片,ゴム,金属などを駒(こま)につけて振動を弱め,金管楽器ではラッパ状の部分に木や金属による西洋ナシ形のものを挿入する。作曲者が弱音器の使用を指示するときはcon sordino(イタリア語)などと書く。なお,グランド・ピアノのソフト・ペダル(左ペダル)はハンマー全体を横にずらして,1音当たりの打弦数を減らすようにしたもの。アップライト・ピアノ(縦型ピアノ)ではハンマーのストロークを短くする。いずれも音量と音質の変化により音楽の表情を微妙に変化させるもので,弦楽器の場合,ラベルの《弦楽四重奏曲》の第3楽章やバルトークの《弦楽四重奏曲第4番》の第2楽章などは,その効果が見事に生かされた例として有名。
→関連項目ピアノ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「弱音器」の意味・わかりやすい解説

弱音器
じゃくおんき
mute 英語
Dämpfer ドイツ語
sourdine フランス語
sordino イタリア語

楽器の音量を抑制したり(例外あり)、音色を変えたりする装置。ミュートともいう。楽譜上では一般にイタリア語でcon sordino(弱音器をつけて)、senza sordino(弱音器を外して)と表記される。バイオリン属では、木、金属、象牙(ぞうげ)などでつくった櫛(くし)状の器具を駒(こま)の上にかぶせて音を柔らかくする。管楽器では一般に、管の朝顔の部分に木、金属、紙、布製などの器具を差し込む。金管で多用され、とくにトランペットやトロンボーンでは種類も多い。ホルンでは、器具はあまり用いず、右手を朝顔に挿入する奏法が常用されている。木管ではまれにしか用いられない。打楽器では、太鼓の膜面に布を置いたり、桴(ばち)にスポンジをつけたりして弱音にする。ピアノでは、ソフトペダル(左ペダル)を用いる。近年、アップライト(竪(たて)型)ピアノでは防音用にミュートペダル(中央のペダル)が加えられているが、通常の演奏には用いられない。なお、イタリア語のsordinoとドイツ語のDämpferはダンパー(消音)とミュート(弱音)の両方を意味するが、英語では両者を区別して用いる。

[川口明子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「弱音器」の意味・わかりやすい解説

弱音器
じゃくおんき
mute

楽器の音を弱めるための装置。たとえば,バイオリン属では3つ足の象牙などでできた小片を駒の上に止めることによって音を弱くし,ピアノでは,ソフト・ペダルを踏むとハンマーが1弦のみを打つようになり弱音になる。またアップライト・ピアノではハンマーの動きを減じることによって弱音を得る。

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