弾・勢(読み)はずむ

精選版 日本国語大辞典 「弾・勢」の意味・読み・例文・類語

はず・む はづむ【弾・勢】

(歴史的かなづかいは「はずむ」ともされるが、室町時代までの諸辞書により「はづむ」とする説に従う)
[1] 〘自マ五(四)〙
① 勢いよくはね返る。反動で元に返る。はね上がる。
平家(13C前)四「馬の足のおよばうほどは、手綱をくれてあゆませよ。はづまばかいくっておよがせよ」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「『これは板毬(いたまり)かヱ』『いいへ、畳の上でよをくはづむよ』」
② せきこむ。せわしくなる。息などが荒くなる。
日葡辞書(1603‐04)「イキガ fazzumu(ハヅム)
③ 調子よく進む。調子づく。勢いにのる。
史記抄(1477)六「急にはづんで云たが、きこへたぞ」
④ 言語・動作などに活気がある。いきいきとする。うきうきする。
※評判記・満散利久佐(1656)竹山「目、かいだれめにて、面体、はづまねども」
⑤ 思いきってする。
浮世草子傾城禁短気(1711)二「そなたの此比髪切て遣りやった先のぬく助は、何ぞはづんだ事したか」
邦楽で、等長リズムを破った不規則なリズム、すなわち、付点音符と短い音符との組み合わせによるリズムのように演奏することをいう。
[2] 〘他マ五(四)〙 金や品物などを気前よく与える。奮発する。奢(おご)る。
※浮世草子・好色一代男(1682)八「亭主一包はづむ」
百物語(1911)〈森鴎外〉「定めて祝儀もはずむのだらうに」

はずみ はづみ【弾・勢】

〘名〙 (動詞「はずむ(弾)」の連用形の名詞化)
① 勢いよくはね返ること。
※類従本重之集(1004頃)上「打返しくはのはつみにまみれつつ秋の頼みも長からぬ世に」
② 調子づくこと。調子がよいこと。勢いづくこと。また、その調子、勢い。
※仮名草子・ぬれぼとけ(1671)上「はつみ・くらいのいきばかり、つくろいなきをせんにして、いとさわがしきふぜいもなく」
③ その時、その場の成り行き。行きがかり。
浄瑠璃・最明寺殿百人上臈(1699)道行「どふやら時のはづみでは、鼻そげでも缺唇(いぐち)でも油断がならぬ」
④ ある事がなされるきっかけ。
恋慕ながし(1898)〈小栗風葉〉一六「私は何有(なに)、一寸した機(ハズミ)で這麼(こんな)事になったのだから」
⑤ ある事がなされる、その瞬間。途端拍子
※浄瑠璃・彦山権現誓助剣(1786)二「放す手よりも引くはずみ、儕(おのれ)が力で尻餠突き」
⑥ 金や品物を気前よく与えたり買ったりすること。奮発すること。
※浮世草子・好色一代女(1686)五「衣類寝道具かずかずのはづみ」
⑦ (「ハツミ」と書く) 浄瑠璃ではずむように速く演奏する曲節。勢い込む所やかけ出す場合などに用いる。はずみぶし、江戸はずみ、のりはずみ、もろはずみなど、いろいろな種類がある。
※浄瑠璃・舎利(1683)道行「ひゃうごにはやくつきじまのハツミいるさたどらぬ西の宮」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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