彌・愈(読み)いよいよ

精選版 日本国語大辞典 「彌・愈」の意味・読み・例文・類語

いよ‐いよ【彌・愈】

〘副〙 (副詞「いや(彌)」の変化した「いよ」を重ねて強調したもの)
物事が加層的に進展するさまをいう。「に」を伴うこともある。そのうえに。ますます。前よりもなおいっそう。
古今(905‐914)雑上・九〇〇「おいぬればさらぬ別れもありといへばいよいよ見まくほしき君かな〈在原業平〉」
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「ここで人に来られては大変だと思って、愈(いよいよ)躍起となって台所をかけ廻る」
② 物事が進展してきわまり、確実であるさまをいう。確かに。ほんとうに。まさしく。きっと。まちがいなく。
※古活字本毛詩抄(17C前)三「彌よ面目ない事ぢゃと思ふ程に何共申共悲いぞ」
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「断然(イヨイヨ)自分は嫌はれたに極ってゐる」
③ いまにも事柄が実現しようとすること。特に、悪い事態が実現しようとすること。
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「彌々(イヨイヨ)となりゃ御布告にでもなりますか」
④ そうでない状態が長く続いてから、ある物事が実現する意を表わす。とうとう。ついに。結局。
※聖教初学要理(1872)〈ベルナルド=プチジァン〉切支丹来歴之略「天主(デウス)を忘れ奉りて、彌(イヨイヨ)御作成日月星禽獣草石抔(など)に祭を捧る迄も悪虐無道に成ける」
坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉一「愈(いよいよ)約束が極まって、もう立つといふ三日前に」
⑤ ある物事が他の物事と比べて、甚だしく程度が増しているさま。
史記抄(1477)一四宛気とは、悍薬の気が中に在て、宛々として、邪気よりも愈深ぞ」

いよ‐よ【彌・愈】

〘副〙 いよいよ。ますます。そのうえに。
万葉(8C後)五・七九三「世の中は空しきものと知る時し伊与余(イヨヨ)ますます悲しかりけり」
[語誌]「いよ」の反復形「いよいよ」の母音が連続するのを避けて成立したと考えられる。平安時代には見られず、「万葉集」や古形の残存した一部訓点資料に見られるに過ぎない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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